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君の生きづらさは必ず克服できる! 〜僕のセッションが効かない人たち〜

”隠れアスペルガー”という症状で「生きづらさ」を感じ、悩んでいる人のカウンセラーを行っている吉濱ツトムさんは著書『隠れアスペルガーという才能』のなかで、「隠れアスペは、必ず克服できる!」と記しています。
 今回は、その著書から『第4章 君の「隠れアスペ」は、必ず克服できる!』の後半部分を公開。

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君の生きづらさは必ず克服できる!〜隠れアスペルガーという才能について〜

僕のセッションが効かない人たち

 先に、「隠れアスペの9割近くが劇的に症状を改善させている」と述べました。しかし、アスペ全般でいうと、改善が極めて困難な人たちが3割くらいいたのも事実です。
 あまりにも症状が重すぎる人や、アスペルガーでも知的障害が入っている人は、周りのサポートが得られなければ、セッションを続けること自体が困難です。金銭的に困窮している人も同様です。必要なサプリメントが買えなかったり、ローカーボができなかったり(ローカーボ食は動物性食品が中心なので、コストがかかります)すると、成果が出なくて挫折してしまいます。
 また、アスペに加えて強い多動衝動性優位型のADHDをもっている人は、意志力と継続力、自己管理能力が極端に弱い傾向にあります。こういう人は、興味の対象がコロコロ変わるので、周りが監視して強制的にやらせなくては、課題を続けることができません。そういう周囲のサポートがなければ、僕一人の力で改善させることは極めて困難です。
 そして、前章で紹介した「困ったアスペ」の人も改善が難しい。自分から僕のセッションを求めてきたのに、やたらと反抗する人です。「ローカーボには問題があって……」とか、「サプリメントは添加物が……」などと、やらないための言い訳ばかりしているので、成果が出ることはありません。
 僕は最初に、来談者にプログラムの全体像をお伝えして、「やりますか、やりませんか?」とお聞きしています。そこで「やる」と言ったからには、僕のやり方に絶対服従することを約束していただきます。「服従」というと言葉は悪いですが、それくらいの強制力がなければ、環境圧力が働かず、「アスペを克服する」という大きな目標を達成できないのです。ですから、僕の言うことを聞けない「困ったアスペ」の人には、こちらからお引き取り願っています。
 改善が困難な来談者が約3割と言いましたが、そのうちの半数の方は、残念ながらこうしてお引き取りいただいています。残りの皆さんは、平均の倍以上の時間がかかるものの、その人なりの努力を積み重ね、なんとか無事に卒業していきます。

セッション前にやるべきこと

 僕のもとへは、発達障害かどうかで悩む方がよく来られます。そこで、まずは発達障害か定型発達か、発達障害ならアスペルガーかADHDか、あるいは両方か。アスペルガーなら真性アスペか隠れアスペか……というように、障害の種類と程度を見極めます。継続的にセッションを受けると本人が決めたら、正確を期すために、僕が紹介する医療機関で診断テストを受けていただきます。アスペルガー診断テスト、成人向け知能検査のWAIS‐Ⅲや田中ビネーⅤ、児童向けのWISC‐Ⅲ、幼児向けのWPSIなどです。
 続いて、やはり医療機関で身体の状態を調べてきていただきます。セロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリンなど神経伝達物質の血液濃度や、栄養状態を確認するための血液検査。ヒューマンカロリーメーターによる基礎代謝量の検査。糖代謝や脳の血流状態の検査など、さまざまな身体上のデータをとります。食事療法や栄養管理を行う上で、正確なデータが必要となるからです。
 最近は、「遅発性アレルギー」の検査もしてもらいます。遅発性アレルギーとは、長期間にわたる食物摂取により徐々に進行するアレルギーのこと。みなさんがよく知っている花粉症などは急性アレルギーで、花粉に接触するとすぐ症状が出ます。しかし、遅発性アレルギーは同じ物を食べ続けることでじわじわと症状が出てくるのです。ローカーボの食事療法では、同じ種類の動物性食品を摂ることが多いので、遅発性アレルギーについて知っておく必要があります。
 本人の状態が把握できたところで、セッション内容を決めていきます。僕のセッションは、だいたい次の順番で進んでいきます。

1 肉体強化
2 行動の是正(行動療法)
3 思考の是正(認知療法)
4 環境設定
5 才能の進展と活用

 まず肉体を強化して、心身ともに楽になったところで、行動や思考を正していきます。同時に、本人にとって結果を出しやすい環境を設定します。来談者個々の状態や症状の特性を考慮して、内容や順番などをオーダーメイドでプログラミングします。
 目標達成までの全体像が見えたところで、さっそく肉体強化を始めます。その中心となるのが、「ローカーボ」です。

「ローカーボ」は肉体改造のカギ

 先ほどから何度も名前が登場している「ローカーボ」。これは僕のセッションにおける「肉体改造」のカギとなる食事法で、炭水化物を極力控えるというものです。炭水化物は糖質と食物繊維で構成されており、ローカーボは「断糖食」「低糖質食」などとも呼ばれます。
 もともとは糖尿病や肥満症の治療に用いられていた食事療法ですが、高血圧や高脂血症、動脈硬化といった生活習慣病、リウマチや自律神経失調症をはじめ、なんとガンにまで有益であることがわかってきました。
 糖質は、お米やパン、麺類、いも類、そして砂糖や果物などの甘い物に豊富に含まれています。これらをカットする代わりに、たんぱく質と脂質を摂ってエネルギー源とするのがローカーボ食です。たんぱく質は、肉や魚、卵、大豆製品に豊富ですが、特に良質なのは肉類。なかでも羊が一番お勧めで、次いで鶏、豚、牛の順です。
 巷では「低炭水化物ダイエット」が根強い人気ですが、こちらはともすると野菜中心に偏る傾向があります。しかし、糖質を減らすなら、その分のエネルギーをたんぱく質と脂質で摂らなければなりません。野菜中心の低炭水化物ダイエットでは、エネルギー不足に陥ってしまいます。
 なぜ糖質をカットするのかというと、糖質が体に悪さをするからです。
 糖質は、消化される際にビタミンB群やたんぱく質など、必要な栄養素を大量に消費してしまいます。また、糖質を摂取すると血糖値が上がります。血糖値が上がると、それを抑えるためにインスリンが分泌されます。このインスリンは老化ホルモンと呼ばれ、肝臓や腎臓の働きを低下させてしまいます。
 アスペルガー人にとっては、特に深刻です。糖質を摂りすぎると、セロトニンシステムが機能不全を起こし、セロトニン不足になります。すると、やる気が出なくなり、体がだるく、情緒も安定しなくなる。すなわち、アスペ特有のマイナスの症状が後押しされてしまいます。
 しかも、糖質には中毒性があるのです。タバコのように、摂り始めると次々と欲しくなる。甘い物が食べたくて仕方なくなるのは、糖質中毒になっているからです。
 実際、僕も糖質中毒だった頃、慢性疲労と不眠に何年も悩まされていました。中学2年から20代前半まで、僕はほとんど甘い物しか食べず、しまいには白砂糖をどんぶりで食べるほどの重度の糖質中毒に陥っていました。低血糖のため常に空腹状態で、いつもイライラしていて体はだるい。気分のいい日なんて1日たりともありませんでした。
 ところが、ローカーボを始めたら、わずか1か月で劇的に体調が良くなったのです。日中の強烈な眠気とだるさがなくなり、体は噓のように軽い。気分の浮き沈みも大幅になくなりました。僕は糖質の弊害に、身をもって気づいたのです。
 現在、僕は1日か2日に1食、鮭缶を食べるだけ。あとはサプリメントや良質なオイル、プロテインなどで栄養補給をします。会食するとき以外は、糖質を摂りません。あれほど大好きだった甘い物も、今は特に欲しいと思わなくなりました。血糖値が安定しているので、だるくなったり眠くなったりすることもなく、すこぶる快調です。
 僕の食事は極端すぎて、ある意味間違っているのでまねをしないでほしいのですが、来談者の皆さんは、それぞれ工夫して多彩なローカーボメニューに取り組んでいます。経済的に肉類を大量に購入できない人は、卵や豆腐でたんぱく質を補って続けています。
 きちんとしたローカーボを続けていれば、肉体的には4日、精神的にも2週間あれば、だいたいみなさん糖質依存から離脱できます。「ご飯を食べないなんて、無理!」と言っていた人も、実際に止めてみると、数日で「ご飯が欲しくなくなった」と言います。自分が糖質中毒だったことに、そこで初めて気づくのです。

アスペはパンを食べてはいけない?

 炭水化物の中でも、小麦粉には特に大きな弊害があります。正確に言えば、小麦粉に含まれるたんぱく質であるグルテンが問題です。グルテンは、グルテニンとグリアジンという2つのたんぱく質から構成されており、この2つが腸内に入ると、カンジダ菌やクロストリジウム・ディフィシルといった悪玉菌が大増殖して、善玉菌が大幅に減少します。それにより、腸内で産出されるセロトニンの量が減って情緒不安定につながるという話は、前にもしましたね。
 さらに問題なのは、「リーキーガット症候群」のリスクがあるということです。グリアジンやグリテニンは、腸内で上皮細胞にくっついて、腸壁に分子レベルの穴を空けてしまいます。この穴から、腸内で大増殖した悪玉菌や排泄物の毒素、未消化のたんぱく質などが漏れ出し、血流にのって全身を巡ってしまいます。それによって免疫が下がり、代謝異常が起こり、アトピー性皮膚炎や喘息、過敏性腸症候群、アレルギー症状などが起こる。これがリーキーガット症候群です。
 また、グルテニンやグリアジンは未消化のたんぱく質になりやすく、その一部が脳内に到達するとオピオイド受容体と結びついて麻薬のような働きをします。結果、頭がボーッとなり、神経伝達が乱れ、精神的にも肉体的にも不安定になってしまいます。牛乳のカゼインというたんぱく質にも同じ弊害があり、だから「パンと牛乳は止めたほうがいい」という話があるくらいです。
 パンや麺類が好きな人にとっては、ショッキングな情報だったでしょうか。セロトニンが十分に産出されていて、アレルギー症状もない人ならそれほど影響はないのですが、アスペルガーは違います。もともと情緒不安定や体調不良に陥りやすい性質なので、小麦粉の悪影響が極めて大きく出てしまいます。アスペルガーには、マイナスの症状を助長する小麦粉、ひいては糖質を排除する食事がベストなのです。

「間違ったローカーボ」に要注意

 最近、一般の人の間でもローカーボが流行しつつありますが、なんの知識もないままにいきなり糖質を抜くのは危険です。血糖値が乱高下するようになり、不整脈や心筋梗塞の危険性が増します。やがて低血糖になると、慢性的な疲労感や抑うつ症状が表れます。また、副腎皮質が無理やり血糖値を上げるために酷使されるので、「ホルモンの源」と呼ばれるデヒドロエピアンドロステロンの分泌が阻害され、老化が促進してしまいます。女性の場合は、生理が止まる可能性があります。このままローカーボ人気が高まると、こういった問題から病気になる人が増えるのではないか、と僕は危惧しています。
 今挙げたような問題は、消化力がしっかりしていて、なおかつ肉類や油脂をしっかり摂っていれば起こり得ません。「ローカーボを始めたら調子が悪くなった」という人は、「ヘルシーだから」といって野菜ばかり食べているのだと考えられます。糖質をカットした分、たんぱく質と脂質を多く摂らなければ、エネルギー不足とコレステロール不足に陥ってしまいます。
 とはいうものの、いきなり肉中心の食事に切り替えると、消化力がおいつかず、胃腸に負担がかかってしまいます。また、どうしても同じ動物性食品を摂り続けることになりやすく、遅発性アレルギーの危険性も出てきます。しかし、こういう諸々の注意点を考慮して、専門家の指導のもと、徐々に体を慣らしながら取り組めば、なんの問題もありません。「ローカーボは危険だ」と批判するアンチの人たちは、これらの事実を知らないのでしょう。
 来談者がローカーボを始める際は、まず1日1食を糖質抜きにして、体を慣らしてもらいます。主食を摂る場合は、パンよりご飯がベター。野菜、肉の順に食べて、最後にご飯を食べます。これだけでも血糖値の上がり方が緩やかになり、糖質の弊害を和らげることができます。問題がなければ、1日2食、3食とローカーボ食を増やし、糖質抜きの生活を目指します。
 たんぱく質の量を徐々に増やしていくと、消化能力は次第に向上していきます。また、ローカーボを続けていると、「糖新生」といって、たんぱく質が肝臓内でグリコーゲンという糖の一種に変えられ、貯蔵されるようになります。さらにたんぱく質中心の食事を続ければ、この変換システムが活発化し、グリコーゲンが蓄積され、必要に応じて補給されるようになります。これで糖質がなくても、低血糖や空腹感に悩まされることがなくなるわけです。
 ローカーボに対する反論で一番多いのは、「脳のエネルギー源はブドウ糖だけだから、糖質をカットしてはいけない」というものです。しかし、「ブドウ糖だけ」というのは間違いです。脂質の代謝物である「脂肪酸」は、全身のエネルギー源であり、肝臓で分解する過程でケトン体という物質を生み出します。脂肪酸は分子量が大きいので血液脳関門(脳へ運ばれる血液中の異物をブロックする関所)を通過できないのですが、ケトン体は通過できます。よって、ケトン体はブドウ糖と同様に脳のエネルギー源になるのです。
 このため、ローカーボを実践するなら、油脂をしっかり摂ることも推奨します。サラダ油やマーガリンといった質の悪い油脂ではなく、オメガ3(青魚の脂やえごま油など)、オメガ9(オリーブオイルなど)といった健康的な油脂を摂るようにしてください。僕は鮭缶にオリーブオイルをかけたり、えごま油をそのまま食べたり、魚の脂から作られたサプリメントを摂ったりしています。腸内には油脂の吸収を調節する機能があるので、多めに摂取しても問題ありません。
 アメリカの糖尿病学会は、「糖尿病予防のために重要なのはカロリー制限ではなく、炭水化物を減らすこと。脂質制限は一切必要ない」と発表しています。「アブラ=不健康」というイメージがありますが、良質な脂質はむしろ摂ったほうがよく、控えるべきは糖質なのです。

サプリメントを摂取する

 アスペルガー改善のためには、ローカーボに加えて、サプリメントを摂取することも重要です。なぜなら、アスペには代謝や消化の機能上、どうしても不足する栄養素があり、それが症状を悪化させているからです。代謝や消化の機能障害を補うためには、ちょっとやそっとの量では足りません。一定期間、集中的に大量摂取しなければ、効果が出ないのです。「ある一定量を超える栄養素を補給して初めて表れる効果」のことを、分子栄養学の用語で「ドーズ・レスポンス」といいます。僕のセッションでは、このドーズ・レスポンス効果を狙ってサプリメントの大量摂取を勧めています。
 アスペ改善のために必要なのは、ビタミンB群、亜鉛、オメガ3、たんぱく質など。加えて、これらを効率よく消化吸収するために消化酵素を摂ります。
 僕は、個々人の血液検査のデータに基づき、摂取するサプリメントの種類と量を指示します。たとえば、「ビタミンAを3か月間、毎日3万マイクログラム摂り、その後は1日1万マイクログラムに減らす」というように。18歳以上の日本人男女の1日の耐容上限量が2700マイクログラムであることを考えると(レチノール活性当量。『 日本人の食事摂取基準2015年版』より)、「そんなに摂って大丈夫?」と思われるかもしれません。
 確かに、栄養素によっては過剰症がありますが、日本の耐容上限量と、本当に過剰症になる数値との間には大きな隔たりがあります。仮に100を超えたら過剰だとすれば、90まで摂ってもいいわけですが、日本の上限値はせいぜい3か4くらい、という感じです。日本の基準に従っていると、ドーズ・レスポンス効果は絶対に得られません。それでは、サプリを摂る意味がまったくないのです。
 ドーズ・レスポンス効果を得るためには、日本製のサプリメントでは含有量が少なすぎて間に合いません。僕はいつも、自分の分は個人輸入代行業者からアメリカ製のサプリメントを購入しています。選び方のポイントは、次のとおりです。

・1粒あたりの栄養含有量が多い
・添加物が少ない(添加物ゼロは難しいので、なるべく少ないものを)
・天然原料で作られている(ビタミンCならローズヒップ、EPAなら魚の脂など)
・吸収率が高い(亜鉛ならグルコン酸型、鉄ならヘム鉄など)

 また、こまめに摂るのが難しい場合は、長い時間をかけて吸収されるタイムリリース方式のものを選ぶとよいでしょう。輸入もので天然原料のサプリメントは高価だと思われがちですが、栄養素の含有量に換算すると、日本製よりもお得です。1粒あたりの含有量が、一般的な日本製品の10倍以上あるものも少なくありません。また、アメリカ製は1ビンあたりの量も多いので、結果的に日本製より安上がりになります。
 僕は、最初にビタミンB群のサプリメントを摂取してみるみる体調が良くなり、情緒が安定することに驚きました。アスペルガー人の心身の不調には、栄養補給という単純な方法が如実に効果を発揮するのです。
 ただ、個々人の体質や持病によっては適さないサプリメントがあるかもしれません。心配な方は、医療機関に相談してみてください。

消化力を上げる

 食事をローカーボに切り替える。サプリメントを大量摂取する。これら「肉体改造」のためのミッションを行う上で、欠かせない作業があります。それは、「消化力」を上げることです。
 アスペルガーの人は、総じて消化力が低い傾向にあります。消化力が低いと、どんなに良い栄養素を摂っても吸収できず、ローカーボやサプリメントの効果も十分発揮されません。それどころか、たんぱく質などが未消化のまま腸内に送られ、毒素を発生することになりかねません。
 アスペルガー人の消化力が低い理由のひとつに、ピロリ菌に感染している人が多いことが挙げられます。ピロリ菌は正式名称をヘリコバクター・ピロリといい、胃の中に生息して胃の粘膜を荒らし、胃炎や十二指腸潰瘍、胃潰瘍を引き起こす細菌です。日本人の50%以上がピロリ菌に感染しており、50歳以上では80%もの高率で菌を保持しています。
 このピロリ菌がアスペによくみられるのは、免疫が弱く感染症にかかりやすいこと、消化器系の働きが慢性的に低下していることが原因かもしれません。また、アスペルガー人は栄養が不足しがちで、強いストレスにさらされていることから、必然的に腸が弱い傾向にあります。これもアスペの消化力が低い理由のひとつとなります。
 ピロリ菌を退治するために最も効率的な方法は、抗生物質を使うこと。僕は、30歳以上の来談者には消化器内科でピロリ菌検査をしてもらっています。数値が高めなら、ビタミンAとビフィズス菌などのプロバイオティクス(善玉菌)を併用して投薬治療で根絶。その上でこの二つの栄養摂取を継続し、加えて、ビタミンC、オメガ3、亜鉛サプリメントを大量摂取する。さらに骨盤周辺の骨格を正して、胃腸を温める。ここまでやって、ようやく消化力が上がってくるのです。
 食事でピロリ菌を減らす方法もありますが、時間がかかるし根絶できないので、再び菌が増える可能性があります。それならば、抗生物質で短期間に一気に全滅させてしまったほうが効率的です。
 先ほども少し触れましたが、いきなり本格的なローカーボ食を始めても、消化力がおいつかない恐れがあります。そこで、まずは1日1食をローカーボにする。よく噛んで食べる(最低でも30回、できれば50回)。「強力わかもと」や「エビオス」といった市販の消化薬を飲む。最後に、バルサミコ酢かレモン汁を水で割って飲む。こういった工夫で、より消化力が上がります。バルサミコ酢は殺菌力が強いため、腸内の異常発酵を抑え、悪玉菌を減らす作用もあるのでお勧めです。


「体癖」を矯正する

 ローカーボが無事定着したら、「体癖」の矯正に取り組みます。アスペルガー人の多くは、体の一部がこわばっていたり、斜めに傾いていたり、動作が不自然だったりという体癖があります。筋肉が凝ったり骨格が歪んだりしているので、そのまま運動に取り組むと、体のどこかを傷めてしまいます。
 体癖を正しく矯正すると、疲れにくく、歩きやすくなります。血管を圧迫していた筋肉の緊張が緩むので、血流が良くなり、基礎代謝が上がります。また、ミルキングアクションの活性化が期待できます。ミルキングアクションとは、ふくらはぎの筋肉が静脈を圧迫し、心臓へ血液を押し戻す作用のこと。これが活性化すると、血流や代謝がますますアップします。血行が良くなれば、前頭葉の血流不足から起こるアスペの症状の改善にも期待がもてます。
 実際にセッションで教えている正しい「立ち方」と「歩き方」を紹介します。

◆立ち方
 多くの人は、「良い姿勢」のつもりで、胸を張って腰を反らした立ち方をします。さらに女性の場合は、膝が内旋して内股になっていることが多い。しかし、人間にとって楽な姿勢は逆です。胸を張るのではなく、少し胸を落とす。腰を反らすのでなく、下腹部に力を入れて引っ込める。肩甲骨を軽く前に滑らせる。膝頭を正面に向け、つま先は軽く外側に向けます。

◆歩き方
 多くの人が間違えているのは、腕の振り方。腕を前に振り出してしまいます。そうではなく、腕を後ろに振った推進力で前に進むのです。また、太腿の前側の筋肉で脚を無理やり持ち上げるのではなく、ふくらはぎの筋力で蹴り出して前に進むようにします。女性に多い、膝の内旋については、膝頭を正面に向けて、足をまっすぐ前に出すように癖づけしましょう。

強制的に体を動かす

 体癖を矯正したら、運動による健康効果を取り入れるために、来談者にはなんらかの運動を続けてもらいます。習慣化しやすく継続しやすいのは、3キロの早足ウォーキング、縄跳びや踏み台昇降、エアロバイクといったリズム運動を15分。これを週3回のペースで行うことをお勧めしています。
 例のとおり、アスペルガー人はいったんスイッチが入れば、定期的に運動することは苦になりません。しかし、もともとセロトニン不足の怠け者ですから、スイッチが入るまでが難しい。そこで、「運動興奮」と「逆運動興奮」を利用します。
「運動興奮」とは、「やる気がないときでも、無理やり始めてしまえば、しだいに気分がノッてくる」ことをいいます。ランニングが面倒だと思いながらも、走り始めるとだんだん楽しくなってきて、気持ちよく目標の距離を走りきる。そんな経験が、誰にでもあるでしょう。あれが運動興奮です。
 あるいは、来客があるからと仕方なく掃除を始めたものの、気づいたら夢中になって、部屋の模様替えまでしてしまった。先延ばしにして溜めてしまった仕事に手をつけたら、だんだん集中してきて一気に片付け、ついでに新しい企画書まで書き上げてしまった。これらも運動興奮です。
 一方、「逆運動興奮」とは、この行動をとると、どんどんやる気を失っていくという現象のことです。たとえば、朝、目が覚めたのになかなかベッドから出ない。ネットサーフィンをする。寝転んだままテレビを見る。こういった行動をとると、なぜか人はやる気を失い、だらだらし続けてしまいます。
 同じ部屋にずっと居ること、同じ人とだけしか会わないことも逆運動興奮です。人間は刺激が少ないと代謝が下がってしまい、うつ状態に近づいていきます。ニートや引きこもりがうつっぽいのは、同じ部屋に引きこもっているからでもあるのです。
 アスペルガー人が運動を習慣化させるためには、強制的に体を動かして運動興奮を呼び起こすこと。もうひとつは逆運動興奮を呼び起こす行動を避けることです。
 次に逆運動興奮を呼び起こす、つまり「やる気がなくなる行動」をリストアップしますので、参考にしてください。

・椅子やソファーに浅くもたれるように座る
・床に座る
・寝転ぶ
・無表情
・小さい声で話す
・視線を下に向ける
・だらしない服装や髪形をしている
・元気がない人、憂鬱な人と付き合う
・重く暗いニュースばかり見る、聞く
・同じ場所に居続ける
・浅い呼吸
・笑わない

行動を是正する(行動療法)

 肉体改造がひととおり終わったら、次は「行動療法」を用います。行動療法とは、強制的にでもとにかく行動することで、良い習慣を身につける方法のことです。
 人間は「心が変わったから行動も変わる」のではなく、心がどうであろうと、「強制的に行動を変えることで、心、思考、感情、意識が変化する」のです。ですから、好ましい行動を強制的に行うことでそれを習慣づけ、アスペルガー人の思考や感情を良い方向に変化させることができるようになります。
 ただし、思いついた行動を一度に全部取り入れたところで、挫折してしまいます。僕のセッションでは、新たに取り入れる行動療法は1か月に2つまで。習慣化に成功したら、また新たに2つの行動を取り入れます。
 一気に変化させるのではなく、少しずつスモールステップで変えていくのがコツです。たとえば、「朝、2時間早く起きる」のが目標なら、まずは2週間で15分ずつ早起きすることにします。こうすれば、2か月以内に2時間の早起きが達成できます。2時間はハードルが高いけれど、15分なら抵抗なく取り組めて、結果的に目標を達成しやすいのです。
 以下は、アスペルガー改善に有益な行動療法の例です。

・寝転がらないように、ソファを撤去する
・だらだらとネットを見ないように、パソコンやスマートフォン、無線LANの電源を切っておく
・早く寝るために、帰宅後は浴室に直行してシャワーを浴びる
・噓でもいいから、笑顔を作る
・朝起きたら、朝日を浴びて体内時計をリセットする
・クッキーの代わりにナッツを食べる

思考を是正する(認知療法)

 アスペルガー人は劣等感が強く、否定的な認知を通してしか世の中を見ていません。ここでいう認知とは、「思い込み」のことです。たとえば、「自分は無価値な存在である」という思い込みがあるから、「わざわざ時間を取ってもらうのが申し訳ない」と人と会うことに消極的になってしまう。あるいは、相手がちょっとでもそっけない態度を取ると、「やっぱり私に価値がないから、嫌っているんだ」と傷ついてしまう。これはまさに思い込みであり、「認知の歪み」です。その認知を強制的に是正していくのが「認知療法」です。
 僕のセッションでは、認知療法として自己暗示をよく使います。たとえば、「無条件に自分が大好き」という言葉をひたすら唱えてもらう。毎日すきま時間に少しずつ、計20分間、必ず口に出して唱えるのがルールです。このとき、心を込める必要はありません。心を込めればなお良いのですが、最初のうちはなかなか難しいので、まずは淡々と。これは、脳に聞かせるために行います。
 英単語を覚えるときは、見るだけでなく、書いたほうが覚えやすいですよね。書きながら口に出せば、さらに覚えやすい。それは入力の経路が増えて、多方面から脳に刺激を与えられるからです。ですから、できれば「私は無条件に自分が大好き」と書きながら唱えるのがベストです。
 なかには「口にした瞬間に、『そんなことない』って私の心が否定するんですけど」という人もいます。それでもいいのです。唱え続けることで、強制的に新しい情報が入力され、やがて古い情報が追い出されていきます。脳の許容量は限られており、新しい情報を入れると、必然的に古い情報が抜け落ちていくのです。心でどう思っていようと、関係ありません。
 この方法は、否定的な認知を書きかえるためにも有効です。たとえば、わけもなく劣等感が襲ってきたときに、「これは本物の劣等感ではなく、アスペの症状に過ぎない」と唱えます。何度も繰り返し口に出すことで、「思い込みだったんだ」という正しい認知に変わっていきます。これをさまざまな場面で応用すれば、否定的な認知を減らすことができます。
 ただし、肉体改造をクリアしていなければ、認知療法はうまくいきません。セロトニン不足のままでは劣等感が強すぎて、どれほど自己暗示を繰り返しても、認知を塗り替えられないのです。僕のセッションで、まず最初に肉体改造を行うのは、こういう理由からです。
 次に挙げるのは、アスペルガーの人が否定的な認知を是正するための自己暗示の言葉です。思い当たるものがあれば、何度も口に出してみてください。

・私には好かれる価値がある
・私はあの人に嫌われる理由がない
・緊張しているのは、アスペだからにすぎない
・不安なのは、アスペだからにすぎない
・私は幸せになる価値がある
・私には好かれる価値がある
・過剰な嫌われたという懸念は、アスペ特有の症状にすぎない
・私は無条件に自分が大好き
・緊張していることに論拠はない、アスペとしての脳構造がそうさせているにすぎない
・この不安と恐怖心に論拠はない、アスペとしての脳構造がそう思い込ませているにすぎない

才能を発揮するための「環境設定」

 先ほどは、やらなければならない状況に来談者を追い込む「環境圧力」について解説しました。ここでは、来談者にとって心地よい環境を設定する「環境設定」のプロセスを解説します。
 ひとつめは、本人が才能を発揮しやすい環境です。具体的にいうと、「どのような環境なら働きやすいか」を考えて、それに合った仕事を選ぶということ。すでに仕事に就いているなら、「いかに働きやすい環境に変えられるか」を考えます。
 アスペルガーに共通するのは、たとえば同時並行処理がない環境。パソコンをいじりながら電話に出て、資料作りの進捗を気にかけつつメールをチェックする……こういった同時進行の作業は、アスペが最も苦手とするものです。他にもざっと挙げると、以下のようになります。

・複雑な人間関係の調整や政治的駆け引きが必要ない
・マニュアルが具体的である
・自分のペースで仕事ができる
・自分のスペースが守られている
・少人数である、または、自分の存在が目立たないくらい大人数である
・外部からの刺激が少ない
・突発的な変更がない

 アスペルガーが強みを発揮できるのは、だいたいこのような環境です。これから就職する人は、この環境設定になるべく近い職場環境の仕事を選ぶことをお勧めします。そうしなければ、せっかく就職してもストレスを感じることが多く、才能を発揮するどころか、仕事を続けられなくなるかもしれません。
 すでに就職している人は、現在の職場の中で、この環境設定にいかに近づけるかを考えます。たとえば、新聞記者だった来談者は、これまで会社で原稿を書いていたのを、ファミレスで書くようにしました。すると、自分のペースで仕事ができるので、ずいぶんストレスが減ったと言っていました。

ストレス解消のための環境設定

 2つめの環境設定は、「ストレスを解消するため」の作業です。本人が心から落ち着ける環境を設定し、その空間に身を置くことでストレスを解消してもらいます。生きているだけでストレスを感じてしまうアスペルガー人にとって、ストレスを解消することは、生活の上で何より優先させるべきことです。好きな場所に身を置く時間を、強制的にでも確保するようにしましょう。
 ストレス解消のための環境は、短期、中期、長期に分けて考えます。短期は毎日10分から15分で行ける場所。中期は週末に2、3時間で行ける場所。長期は年1、2回行ける場所です。たとえば、短期は近所のカフェや公園。中期はホテルのラウンジや海岸。長期は温泉や旅行というように、それぞれ自分の好きな場所を選び、実際に足を運ぶようにします。
 このとき、家以外の場所を選ぶのがルールです。確かに家は落ち着きますが、リラックスはできません。やらなければいけない家事や雑事が目について、どうしても日常のストレスから切り離されないのです。
 この短期・中期・長期に分けた環境設定は、場所だけでなく、ストレス解消のための活動にも応用できます。「これをやれば絶対ストレスを解消できる」という大好きなこと、いわばストレス解消の「儀式」を決めてもらい、どんなに忙しくても強制的に行います。たとえば、短期はギターを弾く。中期はサウナで汗を流す。長期はダイビングをする。こういった儀式を定期的に行うことで、本人はストレスをため込まずに済みます。
 この儀式設定のポイントは、「いい大人なんだから」とか「もう若くないんだから」などと考えて制限を設けないこと。儀式になり得るようなものは、たいがい子どもの頃にやっていたことがベースになっています。「いい大人」がサバイバルゲームに夢中になってBB弾を打ちまくろうが、アキバ系の地下アイドルのライブで踊り狂おうが、まったく問題ありません。そう考えると、ワクワクして、いろいろな儀式が思い浮かんできませんか?
 ストレスがマイナスの症状に直結するアスペルガー人にとって、このような環境設定は必要不可欠です。ぜひみなさんも、強制力のあるストレス解消法を取り入れてみてください。

才能を見つける

 症状の改善が進んだら、いよいよクライマックスです。才能を見つけて伸ばし、それを活用することで社会への貢献力を高めていきます。
 才能といっても、最初から際立っているわけではありません。トップアスリートだって、子どもの頃は「運動の得意な子」ぐらいだったはず。日々の鍛練によってその才能を伸ばし、素晴らしい成績をあげる選手に成長していったのです。誰しも生まれながらに才能を持っています。それに気づいてあげることが、はじめの一歩です。
 才能を探すときには、過去を振り返ってみるとよいでしょう。子どもの頃に得意だったこと、夢中になったことが才能につながっているものだからです。思い出の品や写真を見たり、家族や友人から昔の話を聞いたりすると、思いがけないヒントを得られるものです。
 また、才能を見つける際に指標になるポイントがあります。

・初めてやってみたのになぜか上手にできる
・その分野の知識や技術をすぐに身に付けられる
・身に付けた知識や技術が、あっという間にセミプロレベルに上達する
・スムーズに美しくこなすことができる

 これらのポイントをすべて満たしているものがあれば、自分の才能として磨いていく価値があると言えるでしょう。

才能を伸ばす

「才能を伸ばす」というと身構えてしまうかもしれませんが、なにも特別なことをするわけではありません。正しいルールに則ってやるべきことをやれば、誰でも着実に伸ばしていくことができます。
 心構えとして大切なのは、「自分が怠け者であると自覚すること」と「才能が開花するまでは、才能の開発のみに集中すること」です。いくら才能があったところで、それに胡坐をかいていては、うだつが上がらずに終わってしまいます。磨いてこその才能です。自分が怠惰であることを認め、それを自ら戒め、才能を磨くことだけに集中しましょう。
 まず、才能を磨くために、肉体と集中力を強化します。肉体の強化については、これまで説明してきた肉体改造の内容を継続することです。集中力については、才能を発揮するジャンルによって集中法は違ってきます。ただ、共通して言えるのは、集中を妨げるようなものを徹底して排除する必要があるということです。これは環境設定にも関わってきますが、ついネットサーフィンしてしまったり、マンガを読んでしまったりすることのないよう、集中しやすい環境づくりをしていきましょう。
 そして、才能を伸ばすための効率的な方法として、「快楽学習」を使います。これは、「○○をやるとご褒美がもらえる」と脳に覚えさせるやり方です。手伝いをしたとき、「ありがとう。すごく助かったよ」と言われたら、子どもは喜び、また手伝いをしたくなります。これと同じ状況を作ってあげるのです。「ここまでできたらご褒美に外食する」でもいいし、「えらい、よくやったね」などと声に出して自分を褒めてあげるだけでも効果があります。耳から入った褒め言葉で脳が喜び、また褒められたくなって繰り返すというわけです。最初はちょっと気恥ずかしいですが、周囲に誰もいないときにでも、ぜひ試してみてください。これでなかなか効果があるんです。

才能を生かす

 アスペルガー人が才能を生かすには、その才能を活用することだけに集中できる環境づくりが最も重要です。たとえばアートの才能を生かしたいなら、雑務などをできる限りアウトソースし、自分が創作活動に専念できるようにしてください。これは、職場選びのポイントにもなります。自分の才能とは関係ない事務作業などに追われず、実務に専念できる環境であるかどうか。就職先を探す際には、ここをチェックするようにしましょう。
 また、才能を発揮せざるを得ない環境圧力を課すことも、大変効果的です。SNSなどで現在の取り組みを公表してサボれなくしてしまうとか、作品やサービスを作る前に受注してしまうとか。「やらなきゃヤバい」という窮地に自分を追い込み、逃げられない状況をつくってしまうのです。
 アスペルガーの症状が改善したところで、才能を発揮できる場にいなければ、適応障害を起こしてしまいます。定型発達の人と違い、なんとなくうまくやっていくということはできません。しかしその分、才能のポテンシャルが高くなっているのです。それを進展し、活用することができれば、これまでとはまったく違う充実した人生が花開くことでしょう。

おわりに

 ここまで、隠れアスペルガーについて説明してきました。本書をお読みの皆さんの中にも、「少しあてはまるものがあるな」とか「自分は隠れアスペルガーかもしれない」と思われた方もいらっしゃることでしょう。何でもないことにつまずいてしまったり、劣等感が強かったり、自分のことが許せなかったり。「なんとなく生きにくい」そう思ったら、本書を片手に、ぜひ、改善に取り組んでみてください。
 ひとつ、くれぐれも誤解しないでいただきたいのですが、隠れアスペルガーは、治すべきマイナスではありません。生かすべきプラスなのです。そのプラスを大きく伸ばして、社会で活躍されている方もたくさんいます。
 本書で隠れアスペルガーについて解説してきたのは、隠れアスペルガーのマイナス部分が前面に出てしまい、困っている人があまりにも多いから。そして、プラスを生かして活躍している人も、活躍の裏に大きな悩みを抱えているからです。
 アスペルガーも隠れアスペルガーも、才能あふれる素晴らしい人材です。ただ、そのマイナス面ばかりが目立つため、周囲の理解がおいついていないだけ。アスペルガー本人も、そのご家族も、学校の先生や企業のリーダーも、ぜひ、アスペルガーについて知ってほしい。そして、マイナス面を抑え、プラス面を伸ばすような環境づくりに協力してほしい。アスペルガーが活躍しやすい環境さえ整えることができれば、その能力の高さにきっと驚くことでしょう。そのうち企業ではアスペルガー採用枠が設けられるようになるかもしれません。
 日本は今、経済も産業も文化も、非常に成熟しています。これは、もう既存のやり方では伸び代がないということです。先細りの未来図しか描くことができず、閉塞感に覆われています。これを打破すべく、このところしきりに「イノベーション」という言葉が叫ばれています。先述したとおり、アスペルガーは、大きなイノベーションの担い手となることが期待されます。
 これまでの歴史を振り返っても、イノベーションを起こしてきたのは、他ならぬアスペルガーたちなのです。偉人といわれて名の挙がる人物のうち、実に8割以上はアスペルガーだと言えます。もちろん、偉人たちがアスペルガーだと診断されていたわけではありません。発達障害やアスペルガーという言葉が使われるようになったのはここ数十年ですから。しかし、伝記などに残されたエピソードを見てみると、まぎれもなくアスペルガーであったことがわかります(ADHDの人も少なからずいます)。
 当たり前のことが当たり前にできず、生きづらさに悩むアスペルガー当人は、「もっと普通になりたい」と願うかもしれません。しかし、普通ではない結果を出すことができるのは、普通ではない人だけなのです。アスペルガーという特徴をもつ皆さんは、普通ではないかもしれません。しかし、脳の器質障害という不足をもつ代わりに、偉業の種をもって生まれたのです。この種をどうぞ育み、大輪の花を咲かせてください。
 僕は、アスペルガーが日本を、いや、世界を救うと思っています。本気で思っています。だからこそ、こうしてアスペルガーの皆さんに、自分たちの素晴らしさを知ってもらおうとしているのです。才能を見つけ、開花させ、社会の役に立ててほしいのです。
 百年後の子どもたちは、こんなことを言っているかもしれません。「僕もアスペルガーに生まれたかったな」と。


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