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君の生きづらさは必ず克服できる! 〜隠れアスペルガーという才能について〜

 ”隠れアスペルガー”という症状で「生きづらさ」を感じ、悩んでいる人のカウンセラーを行っている吉濱ツトムさんは著書『隠れアスペルガーという才能』のなかで、「隠れアスペは、必ず克服できる!」と記しています。
 今回は、その著書から『第4章 君の「隠れアスペ」は、必ず克服できる!』の前半部分を公開。

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第3章『君の生きづらさは、「隠れアスペ」のせいだった!』

第4章
君の「隠れアスペ」は、必ず克服できる!その1

隠れアスペの9割が改善! 吉濱セッションの概要

 いよいよここから、僕が行っているアスペルガー改善セッションについて紹介していきます。セッションは、僕のオフィスのセッションルームで行います。セッションが始まったら、まず最初に現在の症状、これまでの症状、生活環境、支援者の有無などを詳しくお聞きします。お聞きした内容に基づいて、具体的な目標を決めていきます。そして、達成を阻害する要素を洗い出し、それを解消するための方法を明確化して、目標達成までのプランを作成します。そのプランを提示し、セッションを継続するかどうか、ご自身で判断していただきます。
 セッションがスタートしたら、3〜4週間に1度、オフィスに来てもらいます。そこで80分間のセッションを行い、あとは次のセッションの日まで本人が自分でトレーニングをしていきます。本当はもっと頻繁にセッションをしたいところなのですが、継続セッションの方が多く、僕のスケジュールが空かないので、1人あたり3〜4週間に1度くらいが限度なのです。
 自分だけでトレーニングを継続するのは難しいものですが、ちょうどサボりたくなる頃に、次のセッションの日がやってきます。2回目以降のセッションでは、前回からの経過を確認し、また次のセッションまでの新たな課題を出します。
 これを繰り返して、早い人だと数か月、遅い人でも数年で目標を達成し、晴れて卒業となります。症状の強さや種類、本人の頑張りや周囲のサポート状況などによって、成果の出るスピードは変わります。
 基本的には若い人のほうが早く結果が出ますが、何歳から始めても、成果が出ないということはありません。僕のセッションは、脳内の神経系の機能を再構築していく作業ともいえます。脳の機能は筋肉のようなもので、トレーニングすれば、何歳であっても再生します。若いほうが筋肉がつきやすいのと同じで、若いほうが神経系が入れ替わるのが早いことは事実です。しかし、ご年配の方でも、序章で紹介したEさんのように、熱心に課題に取り組めば、早く目標を達成することができます。
 一人ひとりの指導に時間がかかるので、あまり多くの来談者を抱えることはできません。これまでに指導した発達障害の方は、延べ700人超。うち隠れアスペの方は約6割です。そして、隠れアスペの9割近くが、症状の6〜8割を大幅に改善させています。これはひとえに、皆さんの努力あってのものです。皆さんがこれだけの結果を出しているという事実を、とても誇らしく思っています。

セッションのゴールは、就職するまで

 僕のセッションには、二つの柱があります。ひとつめの柱は、「発達障害のマイナスの症状を減らす」こと。二つめの柱は、「職業に直結する才能の自覚を促し、進展・活用させる」ことです。
 アスペルガー人が人生に挫折する原因は、情緒が安定しないことと、当たり前のことが当たり前にできないなどのマイナスの症状によって仕事に適応できないこと。この2つに収れんされます。
 仮に無職のアスペルガー人が、症状を大幅に改善できたとしても、無条件に仕事ができるわけではありません。自分に合った仕事を選ばなければ、マイナスの症状が刺激されて長続きしないことが多いのです。せっかく時間と労力をかけて症状を改善したのに無職に逆戻りでは、あまりにももったいない。
 そこで僕は、症状が著しく改善してきたタイミングで、就職支援を行うことにしています。本人の才能を見出し、仕事に活用できる方向に伸ばし、それを生かして就職できるように訓練するのです。就職活動となると、「とにかく何でもいいから仕事が欲しい」と焦ってしまいがちですが、これが一番良くない。合わない職は続きません。才能も適職も、必ずあります。これを見つけることが、職探しの前の大切な作業なのです。
 また、もともと仕事がある人には、職場で活躍できるよう、ロールプレイングなどのトレーニングを施します。そうして無事に就職するまで、もしくは仕事が軌道に乗るまでを見届けて、吉濱セッションは終了となります。
 僕が来談者の就職を重視しているのは、自分が4年間ニートで、経済的な不安に脅かされた経験があるからです。19歳で家を出たとき、僕には300万円の貯金があったものの(僕の整体の施術に感激したお金持ちにいただいた)、4年後には底をついてきました。僕は高校時代に9回もバイトをクビになったほどの社会不適合者。普通の仕事が務まるとは、とうてい思えません。この先どうやって生きていけばいいのだろう……? 不安と恐怖で頭がいっぱいになり、パニックを起こすこともありました。
 体調不良があまりにひどく、全面的に生活習慣を切り替えたのは、ちょうどその頃。第1章でお話ししたように、科学的な体質改善法を片っ端から試したわけです。すると、長年の体調不良が噓のように改善し、アスペ特有の症状がみるみる軽減していきました。これには本当に感激しました。まるで生まれ変わったかのように、心も体も軽やかなのです。そして僕は、「これを発達障害の人たちに伝えよう。僕のように苦しんできた人を助ける仕事がしたい!」と心から思いました。
 そうと決めたら、「どアスペ」の独壇場です。怠け者のニートからワーカホリックに180度転換し、発達障害専門のセラピストとして、睡眠以外、ほぼすべての時間を仕事に費やすようになりました。あれから10年。僕は相変わらずワーカホリックで、たくさんの仕事をいただき充実した日々を送っています。
 アスペルガー人は経済的に不安があると気が狂いそうになるほど気持ちが追い詰められていきます。人間の本質は怠け者ですから、なんらかの強制力が働かなければ、ダラダラした生活になってしまいます。アスペルガーは特にそうなりやすいので、仕事をして人間らしく健全な生活を確保するべきです。そうしなければ、心身が不安定になり、アスペの症状が悪いほうへ逆戻りしてしまいかねません。だから、「環境圧力」として仕事を利用するべきなのです。(「環境圧力」は、ものごとをやり遂げるための強力なツールです。重要な内容なので、あとで詳しく説明します)
 こういった理由から、僕は来談者が就職するまで見届けることにしているのです。最初にそれを説明して、就職するまでの覚悟をもてるかどうか、よく考えてもらいます。そして、覚悟ができてからセッションを開始するようにしています。
 僕のセッションを受けた方は、隠れアスペに限れば、7、8割が無事に就職を果たして卒業しています。「隠れ」の方は、特に才能にあふれているので、優秀なビジネスパーソンに変貌を遂げた方も少なくありません。


まずは「知識詰め」になろう

 セッションを始めるにあたって、まず本人に「知識詰め」になってもらいます。アスペルガーについての知識を徹底的に頭に叩き込むということです。知識をもつことは、アスペの生きづらさを軽減することにも、またセッションの効果を上げることにも、極めて重要な役割を果たします。
 人間にとって、「未知」とは「恐怖」と同義です。アスペルガー人は、周りと同じようにできない自分に戸惑うことが多く、周囲の人とはあまりに違う正体不明の自分に恐怖を感じています。
 知識をもってさえいれば、「アスペだったのか」とわかり、納得できます。それで症状が軽くなるわけではありませんが、まずは恐怖心から解放され、楽になることが大切です。同時に、アスペのプラスの症状を知れば、将来への展望が開けます。
 もうひとつ、知識を得ることは、アスペの異常行動を正すことにもつながります。
 アスペの人は、自分の行いが絶対的に正しいと思い込んでいるところがあります。たとえば、職場で「社長、それは間違ってます。考えが甘いんですよ」とあまりに率直な意見を言ってしまう。女性に対して「君さあ、顔はイマイチなんだけど、胸は大きいから、まあまあだよね」と失礼なことを言ってしまう。普通だったらあり得ない発言ですが、アスペルガー人は、「本当のことを言ってあげたほうが相手のためになる」と思い込んでいるので、正しい行いをしたとしか認識していません。自分が率直に意見されたら激怒するくせに、人にはズケズケと本音で話してしまうのです。
 あるいは、単なる仲間内の飲み会で、5分遅れてきた人に「遅刻するなよ!」と怒鳴りつける。明らかにやりすぎですが、アスペルガー人としては、「時間はきっちり守ったほうが効率的だから、遅れるのは悪だ!」と思っているので、何がおかしいのかわかりません。
 知識がないまま、人から「それ、直したほうがいいよ」と言われても、アスペルガー人は聞く耳をもちません。しかし、それらがアスペの症状だとわかれば、「自分は異常だったんだ」と気づくことができます。そこで初めて「直さなくちゃ」と思うようになるのです。
 まずは自らの症状を認め、「アスペルガー」というフレームで自分を見られるようになることが、セッションを行う上での大前提です。ローカーボも、サプリメントの摂取も、自分の障害への理解がなければ、なぜ行わなければならないのか、芯から納得することができません。病気と診断されなければ治療を受ける気にならないのと一緒で、障害であることがわからなければ、これからやるべき改善法を受け入れることはできないのです。
心や感情の問題は、肉体の強化で改善する
 僕はセッションをする際、来談者に次の4つを禁止事項としてお伝えします。

〇感性を磨いてはいけない
〇霊力を鍛えてはいけない
〇体の感覚に従ってはいけない
〇瞑想をしてはいけない

 アスペルガー人は哲学や精神世界が大好きで、放っておくとスピリチュアルにハマッてしまいがちです。この宇宙のどこかに存在する偉大なる何者かの声を聞くために、あるいは幼い頃の自分と出会うために、自分の「感性」や「霊力」を磨きたがります。自分の「体の感覚」を信じ、体の声に耳をすますために、「瞑想」をします。僕にも、このようなスピリチュアルにハマッてかえって問題をこじらせた過去があるだけに、今はそれらを「扱わない」と自分を戒めています。アスペは興味の対象が限局されていて、何かにハマるとそれ以外のものがどうでもよくなってしまう傾向があります。なので、来談者の方々がセッションに集中するためには、いったんスピリチュアルを忘れていただく必要があるのです。
 改めて言いますが、精神論やスピリチュアルでアスペの「心の問題」が改善することは、一切ありません。それよりも、科学的データにもとづいた「肉体改造」を実践することが先決です。
 食事をローカーボに切り替える。サプリメントを摂取する。運動をする。こういった生理学的アプローチなら、具体的でわかりやすく、誰でも取り組むことができます。心と体はつながっています。アスペルガーの心の問題は、体の異常が引き起こしているのですから、体を変えることで、当然、心も変わります。それはもう、面白いぐらい劇的に変わるのです。
 ただし、アスペルガー人が大好きなスピリチュアルと違い、「肉体改造」はモチベーションを維持するのが大変です。そこで、「環境圧力」を取り入れる必要がでてくるのです。

「環境圧力」を設定する

 僕のセッションは、はっきり言って甘くありません。前回までの課題ができていたかをチェックして、もしサボッていたら、淡々と、かつしつこく来談者を追い詰めます。
「なぜできなかったんですか?」
「すみません……」
「いや、すみませんじゃなくて。なぜできなかったんですか?」
「えーと、次はちゃんとします」
「なぜか、と聞いているんです。なぜですか?」
「……」
 こんなことを言うのは僕がドSだからではなく、あえて恐怖という「環境圧力」を設定するためです。環境圧力とは、やらなければならない状況に人を追い込む、強制力のこと。アスペルガー人にとって、いやすべての人間にとって、恐怖心というのは最大の強制力となります。僕だって、本当は来談者に嫌われそうなことを言いたくないんです。でも、その方の改善のために心を鬼にしてやっているのだということを、ひとこと言い訳しておきます。
 あるときは、部屋をなかなか片付けない来談者に、散らかった部屋の写真をメールで送ってもらい、こう宣告しました。「10日間で部屋を片付けなかったら、この写真をブログにアップします」。自分の部屋の汚さが晒されるという恐怖のあまり、その人は必死で片付けをしました。これが「環境圧力」の力です。
 僕のセッションをスタートすると、生活全般にさまざまなルールが課せられていきます。毎日決まった時間に起きて、決まった運動をし、栄養学的に必要な決まった食事を摂らなければなりません。ダラダラと好きなだけ寝て、好きなだけ食べていたニートのアスペルガー人にとっては、けっこうな苦行と言えます。
 そうでなくても、人間は本来怠け者ですから、なかなかやる気が持続しません。だからこの際、軽い恐怖心を用いてでも、強制的な圧力をかけて行動を促す必要があるのです。「SNSで目標を宣言させる」「できなかったら罰金を払う」などとルールを作るのも、効果的な環境圧力です。
 カウンセラーというのは、接客業の一種かもしれませんが、来談者をお客様扱いしてはいけないのです。カウンセラーの仕事は、お客様にいい気分になってもらうことではなく、来談者の人生が向上するためのお手伝いをすることです。そのために、ときには上から目線で厳しく接したり、ちょっと突き放したりして「怖い」と思わせることも必要になります。僕の来談者は、次のセッションで僕に怒られる(正確に言えば、淡々と無表情で追及される)のが怖いから、イヤでも「ちゃんと課題をやっていこう」となるわけです。
 環境圧力という考え方は、現在、犯罪心理学にも盛んに用いられています。犯罪を起こすのは、犯罪者の人格的な問題だけではなく、「その人が置かれていた環境」も大きな要因になっているというものです。実際、犯罪発生率の高い町で、壁の落書きをキレイに消したら、犯罪発生率が下がったというデータがあります。人間の行動は、それほど環境の影響を受けているのです。

子どもには「勉強の仕方」を教える

 アスペルガーの子どもの場合、まだ自己管理はできないので、生活管理からトレーニングまで、すべて親御さんにやっていただく必要があります。ですからセッションでは、子どもに対する接し方、食事の取らせ方、他の子どもとの遊び方、ロールプレイのやり方などを親御さんにみっちり教えます。
 また、子どもの場合は「勉強の仕方を覚える」ことが大きな柱となります。学校という社会では、「勉強ができること」がそのまま自信につながるからです。それは「条件付き」の自信に過ぎませんが、アスペの子が無条件の自信をつけていくために、まずは条件付きの自信でもいいから身につけたほうがいい。小中学生のうちは、学校の成績の良し悪しが精神状態に大きく影響します。成績が悪いと、劣等感がますます強くなり、学校に行くのがイヤになってしまうこともあります。
 アスペの子どもは、基本的にIQは高いのですが、興味のある科目以外はまったく勉強しません。たとえば、計算ドリルは延々とやっていられるけれど、漢字ドリルは1問もやる気にならない。結果として、できる教科とできない教科の差が激しくなります。また、耳で聞いたことを理解するのが苦手なので、授業中に先生が何を言っているのかわからない。そのため、頭が良いわりに成績が悪いということも起こります。
 そんなアスペの子どもが効率的に、かつそれほど苦労なく勉強できる方法を、僕は提案しています。たとえば、宿題をやった日はマス目にシールを貼るというルール。シールが10個たまったら、好きなビー玉をもらえる。宿題をやらなかったら、お菓子やテレビゲームを取り上げられる。こういったアメとムチを取り入れると、それだけでもやる気を出すようになります。
 また、1問ドリルを解くごとに、母親が子どもをべた褒めすると、その子の脳には「問題を解けば、褒めてもらえる」と刷り込まれます。すると、今までイヤだった宿題も、褒められたいがためにやる気になってきます。
 実践的な勉強法として、ごく一般的な記憶術も教えます。アスペはもともと記憶力が良いのですが、記憶術を使えば、さらに7〜8倍に能力が高まります。記憶力が上がれば、テストの成績が良くなるだけでなく、創造力も豊かになります。第2章で「知識があれば、それだけで社会を生き抜く力になる」と述べましたが、まさに知識は記憶の賜物です。
 経済的に余裕があれば、子ども向けの学習能力開発塾などを紹介して、通ってもらうこともあります。教育のプロが、その子にとって最適な学習プログラムを組んで、学校の勉強よりはるかに効率的な勉強を教えてくれます。
 僕が「勉強、勉強」というのは、アスペの子どもは、できれば学校に通ったほうがいい、学校に居場所があったほうがいいと思うからです。学校に行かない場合は、親がよほどしっかり管理しなければ危険です。フリースクールにまかせっきりで、自由にのびのびと過ごさせていたら、まったく手のつけられない獣のような子になってしまったという例も少なくありません。
 アスペを含む発達障害の子どもに「自由」や「のびのび」は禁句です。親なり、専門の教育機関なりが強制力をもって学習させなければ、社会に適合できる大人になれません。本来は頭の良い子が、教育が間違っていたせいで社会不適合者に育ってしまうのは、残念すぎます。フリースクールのすべてが悪いわけではありませんが、学校に通わせられないのであれば、学校に匹敵する強制力を与える方法を考えていきましょう。


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あざます!
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出版社KKベストセラーズです。ここでは雑誌や書籍といった本だけではなく、私たちがお届けできる様々なコンテンツを魔球混じりに投げていきます。フォローしてもらえるとググッと上がります。どうぞご贔屓にm(__)m ■HP https://www.kk-bestsellers.com/
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