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自律神経を整えて『深睡眠』にいざなう

雑誌『一個人』編集部です。
コロナ渦でおうち時間が増え、運動不足や生活のリズムの変化などで「良く眠れない」「眠りが浅い」といった睡眠の悩みがある方、多くなっているのではないでしょうか。

そこで、自律神経のバランスに着目し、同分野の第一人者として知られる。小林弘幸さん監修のよる、自律神経の効能によって『深睡眠』にいざなう方法をご紹介します。

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首を温めるとぐっすり眠れる5つのワケ

人体にとって重要な神経が走る首を温めるとほっと気持ちがよくなり、副交感神経を刺激、「深睡眠」にいざなう。そんな自律神経の効能について、専門家に話を聞いた。

首の血流をよくして自律神経を安定させる
リラックスした深い睡眠を毎晩、満喫したいと思うものの、寝つきが悪かったり、夜中に目が覚めたり。睡眠にトラブルを抱える人は少なくない。

自律神経研究の第一人者として知られる順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんは、首を温めて副交感神経を活性化させることが不眠解消につながると説く(雑誌『一個人』2017年2月号取材時)。

「私自身もよくやるのですが、熱い蒸しタオルを10分間ほど首に巻くとすごく気持ちがいいし、体調もよくなる。また寒いときに厚手のオーバーを着るより、マフラーを巻く方が温まる。これは誰でも実感することですが、考えてみれば不思議ですね。胸や背中を温めてもいいのに、なぜ首なのか。

首には脳と体幹をつなぐ太い血管があって、手指で押すと、脈動に触れることができます。同じように太くて大切な血管である腹部大動脈はおなかの中にあるので触れませんが、首なら皮膚のすぐ下にある。ですから、ここを直接温めることで血流が速やかに活性化します。その結果、副交感神経の働きがよくなり、自律神経が安定する。日頃の生活でパソコンや携帯をやり過ぎてコリ固まった首が緩み、快眠のリズムができるのです」。

約4〜6キロもある大きな頭を日々支える首には、すべての内臓機能の働きを正常に保つ迷走神経、交感神経が集まっている星状神経節があり、全身のバランスを整える重要な役割を果たしている。長時間のデスクワークなどで常に凝っている肩まわりや首の筋肉を緩めると、交感神経と副交感神経の機能が活性化。「深睡眠」はもちろん、免疫力の向上、疲労回復、内臓機能が整い血糖値が下がるなど、さまざまな効果が期待できる。

 「極端な話をすれば、我々医者でも即効性のある首の治療方法などないわけです。しかし首を温めるだけで『あー、気持ちがいいな』と心からリラックスして一瞬で気持ちが切り替わりますし、目の疲れも取れ、明らかに体調の変化を感じる。それだけ価値のあることなのだと思います」。と小林さんは言う。首を温めるという行為は我々が考えている以上に重大な効能があると言えそうだ。


「深睡眠」を促す5つのステップ


1.首には不眠改善のカギとなる 迷走神経や星状神経節が数多く走っている 首には太い血管、脳から腹部まで到達して内臓の働きに関わる迷走神経、交感神経のかたまりである星状神経節がある。まさに頭と胴体をつなぐ橋のような役割を担っている。

2.首と副交感神経、睡眠力アップには密接な関わりがある
日中は交感神経が優位だが、夜は副交感神経が優位になり、快眠のリズムを作る。首のコリなどで副交感神経が十分に機能しないと交感神経過多の状態が続き、不眠になる可能性も。

3.首を温めることで、加齢によって低下した副交感神経の働きがアップする20代までは男性の副交感神経レベルが高いが、30代でガクッと低下する。女性も40代になると20代の半分以下になるという。しかし、首を温めることで、確実に副交感神経を活性化できるのだ。

4.首が温まると、全身の血液が温まり、血流が改善。コリもほぐれやすくなる
大動脈から分岐し、頭に血液を届ける頸動脈は、細い首を通過するので、外から熱の刺激を与えやすい。首を温めることで全身の血流循環がよくなり、体のコリも自然と取れていく。

5.首を温めて自律神経のバランスが1対1で整うと、さらに質の高い睡眠が得られる
首が温まると血流がよくなり、刺激の多い生活で機能が低下しがちな副交感神経が活性化する。交感神経とのバランスが1対1になると体の機能が最大限に活性化し、快眠モードに入りやすい。


快眠したければ、入浴時に○分間首まで湯につかり、続いて×分間半身浴

快眠のために守った方がいい10のルール

1 .睡眠のゴールデンタイムに ひとまず横になる
睡眠のゴールデンタイムである午後10時〜午前2時に眠ると成長ホルモンが活性化し、疲労回復効果が高まる。この時間帯に睡眠を取るのが難しい人は短時間でも横になり、目を閉じよう。副交感神経が活性化し、夜型体質が改善する。

2. 起きたら太陽の光を浴び、 体内時計をリセット
人の細胞には「時計遺伝子」が存在し、自律神経のバランスに深く関わっている。「時計遺伝子」が司る体内時計は24時間より少し長めなので、朝起きたら太陽光を浴びてリセットしよう。「時計遺伝子」が活性化し、夜の快眠につながる。

3.生活の中に昼寝を うまく取り入れる
 睡眠不足で自律神経のバランスが崩れると、判断ミスやイライラの原因になる。短時間の昼寝で副交感神経を刺激すれば、頭がぐっとクリアに。ただし仮眠は30分以内が原則。それ以上寝ると、逆に自律神経のバランスを乱してしまう。

4.会社や駅の階段を利用して 昼間に20〜30分程度歩く
精神を安定させ、睡眠を促すセロトニン、メラトニンは、日中の太陽の光と運動によって生成が促進される。通勤時間などを活用し、太陽の下で20〜30分間、歩くことに集中しよう。ハードな運動よりも、確実に質の良い睡眠につながる。


5.「1:2呼吸法」で 快眠を呼び込む
不眠で悩む人のほとんどが浅い呼吸で、自律神経を乱している。ゆっくりと深い呼吸は副交感神経の働きを効果的に高めるので、4秒かけて息を吸い、8秒かけて息を吐く「1:2呼吸法」を実践しよう。無理なく快眠につながっていく。

①丹田を意識して息を吸う 手で三角形を作り、頂点がへそ下にあるツボの丹田にくるよう当てる。4秒間かけて、鼻からゆっくりと息を吸い込もう。意識を丹田に集中し、姿勢はまっすぐに整える。

②丹田を意識して息を吸う 次は口をすぼめるようにして8秒間、息を吐く。細く、長くを意識し、すべての息を吐ききるのがコツ。吸う=1、吐く=2の割合を意識しながら、これを3回繰り返す。


6.「タッピング」「微笑み」で顔のストレッチ
短時間で簡単かつ全身の筋肉を緩める顔のストレッチは自律神経の安定化に有効だ。感謝の気持ちを持って、口角を上げて微笑むと副交感神経の数値がぐっと高まる。また指先で頭と顔を優しくタッピングすると顔のコリが取れる。

①「タッピング」人差し指、中指、薬指の 3本を使って優しく叩く 背筋を伸ばして椅子に座り、胸を張る。両手の人差し指、中指、薬指の3本を側頭部に当て、額に向かってリズミカルにタッピングすると緊張感が取れ、副交感神経が活性化する。

②顔のツボを気持ちよく 軽くタッピング 側頭部から額へのタッピングが終わったら、顔全体を軽くタッピングしよう。眉間→眉の下→目のまわり→鼻の下→顎の順番に、気持ちいいと感じる場所を指先で優しくタッピングする。

[ Point ]
タッピングの力加減は肌に軽く触れる程度。強すぎると副交感神経が下がって逆効果に。


7. 40℃のお風呂に 首まで5分、半身浴を10分
入浴は副交感神経の働きを高め、質の良い睡眠を得るために大切な存在だ。40℃の少しぬるめの湯に5分間、首までつかり、続いて10分間、半身浴を行う。すると深部体温が38.5〜39℃の適温になり、快い入眠につながる。


8.副交感神経を上げてくれる 「香り」を利用する
好きな香りを嗅ぐと末梢の血流がよくなり、副交感神経の機能が上がる。食後にハーブティーを飲んだり、寝室にアロマを焚くのは男女問わず活用したい習慣だ。香りは個人の好みが大きいので「心地よい」と思う香りを選ぼう。


9.寝る前の 儀式を決める
自律神経のバランスは規則的な動きによって安定する。自分なりに「寝る前の儀式」を作り、それを日々実践することで副交感神経がアップ。心地よい睡眠に入れる。儀式は無理なく実践できる簡単なものにするのが継続のコツだ。


10.寝具にこだわる
快眠には寝具選びも大切だ。まず頭を乗せたとき、首と床が平行状態になっている枕を選ぼう。布団やマットレスは体圧を適度に分散し、適正な姿勢を保てる支持力がポイント。自然な寝返りを阻害しないものが選択の基準になる。


監修
順天堂大学医学部教授
小林弘幸さん
1960年、埼玉県生まれ。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科などを経て現職。自律神経のバランスに着目し、同分野の第一人者として知られる。著書に『快眠したければ「首」を緩めなさい』(小学館新書)など多数。


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