医師に訊いた 「健康効果がUPする」夏野菜の食べ方

野菜は旬の方が栄養価が高く、味も良いので積極的に摂りたいですね。
いまが旬の夏野菜のなかでも、身近で手に入りやすく、生活習慣病の予防に効果が期待される、4つの優等生夏野菜を選出しました。
それぞれどんな効能がある? 効果的でおいしい食べ方は? 
TVでも活躍する医師の石原新菜さんに伺いました。

※『一個人』2021年夏号「旬野菜の健康献立」より抜粋


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【トマト】
リコピンが活性酸素を除去、老化やがんを予防

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真っ赤に熟したトマトは、夏においしく感じる野菜。この赤い色こそがトマトの代表的な健康成分で、その正体はリコピンというカロテノイド(自然色素)の一種。リコピンは強力な抗酸化力をもち、老化やがん、動脈硬化などの原因とされる活性酸素を除去する作用があるとされます。

「完熟トマトにたっぷり含まれるリコピンには、コラーゲンの産生を促し、シミなどの原因となるメラニンをつくる酵素をブロックする作用もあるため、若々しい素肌や弾力のある血管を保つためにも効果的です。また、トマトはポリフェノールの一種であるルチンも豊富。ルチンは抗酸化作用のほか、血流をよくして毛細血管を丈夫にする働きがあり、脳梗塞や動脈硬化の予防も期待できます。特にミニトマトは、中玉や大玉トマトより栄養が凝縮されているのでおすすめです」と石原さん。

体内の活性酸素はかたよった食生活や飲酒などによって増えるますが、トマトのリコピンはこの活性酸素から私たちの体を守ります。ちなみにリコピンのほか、ビタミンC、Eもトマトが赤くなる過程で増えるため、完熟したトマトほど、健康効果が期待できます。さらにトマトに多く含まれるカリウムには余分な塩分を排出し、血圧を下げる作用があります。

ところでトマトの原産地は紫外線が強いアンデスの高地。夏が旬で水分が多いため、漢方では体の余分な熱を冷ますとされます。トマトが夏においしく感じるのはそのため。しかし、現代人は食べ方に少し工夫が必要だといいます。

「実は夏こそ、冷房などで体が冷えきっていることが多いので要注意。体が冷えると免疫力が低下し、さまざまな病気を招きます。塩を加えたり、加熱すると体を冷やしすぎることなく、トマトの健康成分を摂取できます。また、リコピンは脂溶性なので油と一緒に摂ることでその吸収率が高まり、加熱にも強いのが特徴です」

[主な栄養・健康成分]
◦リコピン
◦ビタミンC
◦βカロテン
◦カリウム
◦ルチン

[主な効能]

◦血液浄化
◦高血圧・脳出血の予防
◦免疫力アップ
◦がん予防
◦貧血予防

[健康効果を高める食べ方・調理法]
•油を一緒に摂るか調理に使ってリコピン&βカロテンの吸収率を高める
•体を冷やす効果もあるので、冷え性の場合は加熱調理がおすすめ

【ナス】
ポリフェノールの一種ナスニンが動脈硬化を予防

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あっさりとした旨味のナス。実は9割以上が水分であることから、従来はあまり栄養価が高くないとも考えられてきましたが、漢方では古くから体のほてりをとる、血流をよくする、血管を強くするなどの作用があるとされ、のぼせの改善、生理不順や肩こり解消、脳梗塞の予防などに役立てられてきました。近年はその健康効果が広く知られるようになっています。

「なかでも注目成分が、抗酸化成分であるポリフェノールの一種、ナスニンです。鮮やかな紫色はこのナスニンによるもので、抗酸化作用をもち、動脈硬化やがん予防、老化の予防までさまざまな効果が期待できます」

ちなみにナスにはアクがあり、調理前にアク抜きをすることがあるが、このアク成分のクロロゲン酸も、じつはポリフェノールの一種。アク抜きはあまり丁寧にしないほうがよい、と石原さんは指摘します。

「ナスを水にさらすと、抗酸化成分であるクロロゲン酸が流出してしまいますから、アク抜きはあまりしないほうがよいですね。また、ナスニンは紫色の部分に含まれるので、できるだけ皮をむかずに調理したほうが、ナスの健康効果を損ないません」

そのほかにも、ナスニンは視力回復や眼精疲労に効果的とされるので、パソコンなどで目を酷使している人にもおすすめ。ちなみに虫歯や歯槽膿漏には、ヘタを黒焼きにして塩を混ぜ、歯みがき粉として使うとよいです。

ナスはカリウムが多く、利尿を促すことから、むくみを解消したり、血圧を下げる作用もあります。また、出血を防いだり、骨粗しょう症予防に用いられるビタミンKも含まれています。

「ただし、ナスは夏野菜のなかでもとくに体を冷やす作用が強いのでちょっと注意が必要。体を温める作用のあるショウガや、味噌などの発酵食品と一緒にいただいてください」

[主な栄養・健康成分]◦ナスニン
◦カリウム
◦ビタミンK

[主な効能]

◦動脈硬化・高血圧の予防
◦虫歯予防
◦歯槽膿漏の予防・改善

[健康効果を高める食べ方・調理法]

•抗酸化成分のナスニンを含む皮はなるべくむかない!
•体を冷やす効果もあるので、冷え性の場合はショウガや味噌で調理する

【オクラ】
胃腸が弱りがちな夏にネバネバが効く

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夏バテで胃腸が弱り気味なときにおすすめなのが、パワフルな力をもつオクラ。原産地とされるアフリカ東北部では、2000年以上前から栽培されてきたといわれる健康野菜です。

日本で一般的に食べられるようになったのは昭和40~50年代と意外と最近のこと。暑い土地の出身だけに、夏の体調をととのえてくれます。

「オクラの特徴といえば、なんといってもあのネバネバですね。きれいなグリーン色の実を切ったときに生じる粘りの正体は、ペクチンという水溶性食物繊維とムチンという糖タンパク質によるもので、これらの成分には胃の粘膜を保護し、タンパク質の消化を助ける働きがあります。また、特に注目したいのがオクラの優れた整腸作用。近年の日本人のなかでは、大腸がんが増加の一途をたどっていますが、便通がよくなることで、大腸がん予防にも効果的と考えられます」と石原さん。

ペクチンには、動脈硬化を進行させてしまう悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の吸収を抑えて血中コレステロールを減らす働きもあるため、中性脂肪が気になる人にとっても頼もしい食材。血液を理想的な状態にし、脂質異常症を予防する効果が期待できるといいます。さらにペクチンには糖分の吸収を抑える作用もあることから、糖尿病の予防にも役立つと考えられています。

一方、ムチンには、タンパク質の消化吸収を助けるほか、細胞の保水力を高めて粘膜を保護する働きがあり、胃炎や胃潰瘍の予防にも効果的とされます。
「そのほかにも、オクラには夏バテ予防に役立つビタミンB群、ビタミンC、免疫力を高めるβカロテン、骨を丈夫にするカルシウムなどが含まれているのでこの季節におすすめです。ちなみにオクラのネバネバはアルコールから胃壁を守ってくれるので、晩酌のおともにもぴったりですね」

[主な栄養・健康成分]
◦ムチン
◦ペクチン
◦葉酸

[主な効能]
◦整腸作用
◦胃腸病の予防
◦悪玉コレステロールの上昇抑制

[健康効果を高める食べ方・調理法]
•体を冷やす食品のオクラは魚介類や赤身肉、海藻など体を温める食品と合わせると◎
•ネバネバが苦手な場合は、スープにすればたくさん食べられる

【ピーマン】
肌が若返り、心筋梗塞を予防

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漢方では体の余分な熱をとり、イライラを解消する食材とされるピーマン。中南米原産で温暖な地域で育ってきたため、ほかの多くの夏野菜と同じように、暑い時期の体調をととのえ食欲不振を改善するなどの効果が期待できます。

「ピーマンの注目成分のひとつが、強力な抗酸化作用をもつβカロテンです。皮膚や粘膜を強化し、免疫機能を正常に保つことで、ウイルスなどに負けない体づくりを助けてくれます。また、ナスと同じく眼精疲労にも効果的。ちなみに完熟した赤ピーマンは、βカロテンの含有量が緑ピーマンよりも豊富。βカロテンはカロテノイドの一種で、体内で必要に応じてビタミンAに変換されて働きます」(石原さん)

βカロテンの量では赤ピーマンに敵わないものの、緑ピーマンも実力は十分。緑色の天然色素であるクロロフィル(葉緑素)に強い抗酸化作用があり、がん予防にも効果が期待できるほか、体内の悪玉コレステロールを排出し、血液をサラサラにして血流循環をよくしてくれます。加えてトマトにも含まれるルチンが毛細血管を丈夫にし、血管をしなやかにしてくれることから、脳梗塞や心筋梗塞の予防にも効果があるといわれています。ピーマン独特の香りの成分にも、血液が固まるのを予防する働きがあるとされます。

「ピーマンにはビタミンCがトマトの4倍と豊富に含まれており、肌のハリや弾力を保つコラーゲンの生成もサポートします。髪の毛を育てるケイ素も含むので、若々しい肌や髪の毛を保つアンチエイジング効果も期待できます。また、ほかの夏野菜と同じく、体を冷やす作用があるピーマンは、体を温める作用のある肉などとの相性がよいですね」

βカロテンは油と一緒に調理すると吸収力がアップするため、サラダや肉詰めのほか、油で豪快に炒める中華料理もおすすめの調理方法です。

[主な栄養・健康成分]
◦βカロテン
◦ビタミンC
◦ルチン
◦クロロフィル

[主な効能]

◦心筋梗塞予防
◦血液サラサラ
◦がん予防
◦夏バテ予防
◦発毛促進

[健康効果を高める食べ方・調理法]

•油を一緒に摂るか調理に使ってビタミンEの吸収率を高める
•体を冷やす食品のピーマンは肉類など体を温める食品と調理すると◎
石原新菜さん 
イシハラクリニック副院長
医師。1980年長崎県生まれ。2006年3月帝京大学医学部卒業。同大学病院で2年間の研修医を経て、現在はおもに漢方医学、自然療法、食事療法による幅広い病気の治療にあたる。著書は『病気にならない蒸し生姜健康法』(アスコム)など。日本内科学会会員。日本東洋医学会会員。テレビ東京「主治医が見つかる診療所」レギュラー出演中。


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