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雑誌『柴犬ライフ』の内容を紹介します。

昨年末に発売された『柴犬ライフ』は巷の柴犬ブームとは無関係に、
ひたすら純粋に柴犬好きに向けてつくられたエモ目な柴犬専門誌です。おかげさまで、amazonでは本年1月より幾度となく品切れ状態となっていましたが、再々々々入荷されました(※3月12月現在)。
「ふーん。で、それってどんな本なわけ?」
そんな、ちょっとでも興味を持ってくれたあなたのために、告知まじりではありますが、どんな本なのかを編集長に語ってもらいました。

『柴犬ライフ』という柴犬オンリーの雑誌がいま書店で売られている。内山慎吾カメラマンが撮ったカバー写真の美しさ。柴犬たちのあの手触りが伝わってくるようなディテールが柴好きなあなたを刺激するはず。

SUMiCOカメラマンが駆けまわり、時には地べたに這って捉えた柴犬たちの柴犬らしい表情や仕草。

柴犬好きの夏生さえりさんも撮りおろしたね。
さえりさんが書きおろした長めのエッセイは、ちょっと胸がキュンとくる。せつなさと可愛らしさはどうしてこんなにも相性がいいのだろう。

長生きして欲しい思いはひとつ。だから特集「長寿の森」を。
シニアに適したフードや医療、そして介護生活にもスポットを当てたい。だって、みんなに長生きして欲しいし、地味と言われようとこれ、大切なことだと思うんだ(※参照記事)。

『ほぼ日』主催、糸井重里さんとジャルジャルの福徳さん、内山慎吾カメラマンを迎えて、読者投稿「柴犬祭り」の審査会も盛り上がったな。とにかく柴犬たちの魅力が伝わってくる投稿ばかりだったし、おちゃめで、キュートな子たちばかり。

その他、柴犬検定や柴犬病気事典、柴人生のライフプランに柴気質座談会、柴犬Q&Aと、読んでためになる特集も盛りだくさん。
柴犬が大好きなみなさん、どうかご一読を。

最後に、ちょっと変わったドッグトレーナーの小野ちゃんにご登場願おう。
彼は調子のいいことを言わない。リアリストでいてなかなかのロマンチストなのだ。
この文章が、雑誌『柴犬ライフ』の言いたいこと、かもしれない。
どうか、あなたの手にもこの雑誌を。
※web『柴犬ライフ』

「速攻で反撃かストライキにあうだろう」
小野ドッグトレーナーの柴犬心理学

日本犬と言われると柴犬を思い出す。他の犬種もいるが、やはり柴犬だ。
 
柴の子犬の「かわいさ」がツボにハマる日本人は多いのではないかと思う。ぼくもなんだかんだで柴犬が好きだ。

目をつむって思い出してみる。触ったときの体の安定感、毛の感じ、刺さるような刺さらないような、あの毛の感じ。
 
体を触ったときの安心感、触らせない柴犬じゃない安心感、心がオープンになっている柴犬は本当にかわいい。
 
今度は柴犬がいる光景を思い浮かべてみる。おじいちゃん、おばあちゃん、縁側、雪遊び、ごはん待ち、散歩の興奮、ときどき唸る、丸まって寝る、尻尾を振ってるときの顔、態度の豹変、おおげさ、他犬との距離感。
 
けれども、犬を飼おうと決めてから、犬を飼うまでの流れの中で、「どんな犬のプロに出会えたか」が今後の柴犬ライフを大きく左右する。これはどの犬種にも言えるけど、特に柴犬の場合はかなり重要だ。
 
これから初めて柴犬の飼い主になる人は「頼れるプロを見極めること」が重要で、もしそういう存在が見つからなかったら、飼うこと自体をもういちど考えてもいいくらいだ。柴犬に対して生半可なコントロールをしようなんて思ったら、速攻で反撃かストライキにあうだろう。
 
大げさに聞こえるかもしれないが、問題が起こってからの柴犬との生活は、本当に大変だから。
 
頼れるプロは「ドッグトレーナー」という肩書きの人が多いと思うが、病院の先生、トリマーでもなんでも良い。要は肩書きではなく、柴犬と真剣に対峙している人、経験豊富でつねに考えられる人、だ。
 
ダントツで柴犬の大変な部分にハマってしまう人が、「人に迷惑をかけないように」がモットーで、人間的にやさしい人。決して悪い飼い主ではない。「優柔不断気味」がついてくるけど。
「人間的」「優柔不断」は、私の中では「犬のしつけ」において、もっとも邪魔をする部分だと考えている。
人に迷惑をかけないようにと考えると、それに付随して(金銭的、時間的な問題もあるが)自分でなんとかしようとする。ネット、書籍を漁り、巡り、フワッとしたまま試す。
 
人間的にやさしいので、「私がされて嫌なことは相手にしない」「私は良いけど、この子は好きかしらん?」という気持ちが前にきてしまう。ここで出会うのが「陽性強化」。そして、その人のきちんと理解していない「妖精みたいな陽性強化」が、始まる。
 
きちんと理解していない陽性強化は、「やさしい人」の「嫌じゃないこと」の部分で行うので、レパートリーも選択肢も範囲がものすごく狭い。思い切ったかじ取りなど、やりようもないのだ。
 
でも、けっして悪い飼い主ではない。違う犬種を飼っていれば上手くいっていたかもしれない。
 
では、柴犬と上手く付き合って飼っている人はどんな人か。「人間的」の反対は「動物的」ということに、ここではしておく。
 
柴犬は、人間的なコミュニケーションスキルが先行している人には難しいかもしれない。動物的なコミュニケーションスキルが先行している人が、わりと上手く関係を作っている気がする。いわゆる動物っぽい人だ。
 
下手するとちょっと変な人、個性的っていう人の方が、柴犬と上手くいっていることが多い気がする。

柴犬がどんな犬なのかを考察すること、しつけをお勉強することは大切だが、それ以上に動物的な人は、「生の」「ライブの」「現場の」感覚、経験を自ずと大切にしている。
 
それを文字にして考えて実行にするのはとても高度で、経験が豊かな人じゃないとできないと思う。
 
柴犬を飼ったら、人間的な知識ばかりではなく、ぜひ自分の「動物的な部分」を呼び覚まして欲しいと思う。人間も動物。忘れないで欲しい。
 
柴犬は、そのくらいの気持ちで挑む犬種なのだ。決して「ちょっと良い服選び」の感覚で選択肢にはいれて欲しくない。
 
私は私、犬は犬。
 
かの有名なゲシュタルトの祈り。柴犬を見ていると、その言葉が言わんとしていることがシミジミと感じられる。
 
私は私。犬は犬。この境界線を上手く引けない人は、柴犬にはかなり手を焼くだろう。
 
ただ単に言うことを聞かせられればいいわけではない。犬との暮らしに何を感じられて、何があるか。恐らく擬人化(擬人化と言うよりは擬子ども化)が蔓延しているこの社会では、とても気づきにくい大切なことが柴犬に接しているうちに、もしかしたらわかってくるのではないか……。そんな部分でも、ぼくは柴犬に期待している。
 
柴犬はとても良い犬種だ。ぼくの人生最後に飼いたい犬種リストの上の方にいる。
 
身体的な部分、メンタル的な部分、醸し出す情緒、雰囲気、つながり、日本の風土に合った作り、大きさ、日本にいるのなら飼うべき犬ナンバー・ワンかもしれない。今まで会った犬の中で、真剣に向き合う大切さを教えてくれた犬でもある。
 
最近は保護犬から柴犬の里親になっている人も少なくないだろう。成犬になってからお家に迎えいれてるのは、その過程で「頼れるプロ」に会うことも多いだろうし、何より柴犬を選択した時点で、既にフィーリングを頼りにお家に迎えいれていることだろうし、保護団体などが、何らかのフィルターをかけて里親を探しているはず。実はペットショップから子犬を買ってくるより、意外にもこちらのほうがちゃんとうまくいく流れができているのだ。
 
なので、ドッグトレーナーとしてはそんなに心配はしていない。稀に「お、ちょっと危ないかな」という組合せはあるが、子犬から柴犬を育てているよりは不安はない。
 
こんな素晴らしい犬を堪能できるように、人間として犬のことを深く理解し、流行りに乗らず、かわいらしさに騙されず、けれども時には騙され、思いっきりつきあいたい。
 
この最高に動物らしい柴犬に、動物的につきあう楽しさをみつけよう。
きっと最高のパートナーになるはずだから。
(……毛が抜けまくるのがちょっとなー)



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