”邪気退散”を願っていただく駅弁 邪気退散招福ちらし/松江駅(小林しのぶの「駅弁含哺鼓腹」)
雑誌『一個人』編集部です。
毎回選りすぐりの「1駅弁」を”駅弁の女王”小林しのぶさんに紹介していただいています。
今回のお弁当は松江市の「邪気退散招福ちらし」です。
パッケージが特徴的です。怖い鍾馗(しょうき)様の顔が載っていますが、何か関係がありそうですね。
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彩り、盛りつけ、味、すべてに美しく、ご利益多いちらし寿司
松江市で明治34年に創業した「一文字家」は、島根県を代表する老舗調製元。
駅弁をはじめ、仕出し料理、惣菜、ビジネスランチまで、100年以上にわたり、まさに松江の”味”を伝統的に受け継ぎ、創り出し、内外に発信してきた名店です。
駅弁はどれもうまくて、松江駅に寄ると一度にいくつも買ってしまいます。30年前ならいくらでも食べられましたが、今は2~3個でギブアップ。それでも目と心はもっと食べたいと欲してしまいます。牛のように胃がたくさんあればよいのですけれど。
さて、今回紹介するのはまさに今食べたい「邪気退散招福ちらし」です。古来から魔除け、学業成就に効能があると言われる鍾馗(しょうき)の顔写真が掛け紙の左上に据えられ、グッと睨みを効かせて外界を見下ろしているように見えます。
鍾馗様といえば、子供の頃は近所の家の屋根に乗っている様子もしばしば見られましたが(我が家はありませんでした)、すっかり姿を消しましたね。鍾馗様と目が合うと怖かったなあ。
鍾馗様は石見神楽にも登場し、疫病神を退治いたします。そしてこの駅弁は、鍾馗様をモチーフに作ったそうです。
料理は、島根県石見地方の名物「のどぐろの炙り」、「赤天」、「あなごの蒲焼」。 出雲地方からは、五穀豊穣を願う「飯南町産招福米の酢飯」、「黒豆」、「小豆」。出雲大社が朝廷に献上したと云われる「金針菜」、「松江郷土料理しじみのしぐれ煮」。そして因幡・伯耆の国からは、「大山鶏の日本海産昆布の旨煮」、「鳥取県境港産の紅ズワイガニ」。
こうして料理名を並べているだけで、酒がほしくなってきます。
山陰島根の名物をたくさん盛り込んだ縁起の良いちらし。”邪気退散”を願っていただきましょう。
邪気退散招福ちらし 1,280円
一文字家(0852-22-3755)
小林しのぶ
日本フードアナリスト協会評議委員。駅弁愛好家。
「食」「郷土」にまつわる風俗・民俗・文化を中心に取材活動を続ける。駅弁の食べ歩きは30年以上に及び、食べた駅弁の数が5000を超えることから“駅弁の女王”と呼ばれる。調製元との以上に及び、食べた駅弁の数が5000を超えることら“駅弁の女王”と呼ばれる。調製元との駅弁開発、プロデュースも手がける。 新聞、雑誌、ウエブ等に連載多数。著書に「全国美味駅
弁 決定版」(JTBパブリッシング)、「超いまうまい帖」(ぶんぶん書房)ほか多数。
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