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伝説の色事師“ラッシャーみよし”が教える「痴的」な生き方


 人間には生まれ持った「器」というものがある。
 残酷だが、これは紛れもない事実だ。仕事や趣味、人付き合いにいたるまで、上手くいく人はやはり何かしら才能に恵まれているものだ。
 では、努力や学びに意味がないのかといえば、それもまた否である。
 われわれ凡人にとって、有り余る才能を持つその道の達人に教えを乞うことにより、自らを高めることは充分可能だ。

 今回話を聞くのは、自他ともに認める「変態」であり、エロ事師として一部にその名を轟かせるラッシャーみよし氏である。

 人は誰でも老いる。年を重ねるごとに、あれほど旺盛だった愛欲が衰えていき、男はみな好々爺になっていく…というのが普通であるが、この日本アダルト界の生ける伝説は、還暦を過ぎていながら枯れるどころか咲きっぱなし。しかもご本人は早稲田大学大学院ロシア文学専攻修士過程卒であり、ロシア語だけでなくフランス語も解するインテリである。

 持て余すほどの知性と痴性。口を開けば猥談が止まらないほどのエロの探求者でありながら、どこか品性があり、そんなキャラクターが人々に愛される。とにかくことエロに関しては、これほど器の大きい人は滅多にいるものではない。果たしてその無限とも思える欲情は、どこから湧いてくるのか? みよし氏の生き様は、世の男性へのヒントとなるのか…? 

|生まれ持って備わった性欲には個人差がある!?

 筆者は今回のインタビューに際して、あらかじめ「枯れない男の条件とは何か?」というテーマで話を伺うと本人へ伝達済みだった。

 ところが開口一番みよし氏が語り始めたのは、自らの変態行為の体験談。しかも、その語り口はまるで天気の話でもしているかの如く、自然体そのもの。当然それらの話をここでご紹介できるわけもなく…筆者はお下劣トークの嵐が過ぎ去るのをただ待つのみ、といった感であった。
 頃合いを見て、切り出した。ご自身は、いつからそんな感じなのか? 性の目覚めはいつだったのか? と。

「僕自身の性の目覚めは、小学校6年生の時。その当時、ミニスカが流行っていたんだけど、同級生の女の子が何かしでかして、先生に立たされてたんですよ。まあ当時はそういうの、普通にあったからね。
 で、ずっと立たされっぱなしだと、辛いから太ももがモジモジ動くわけです。それを見ているうちに、なんだか変な気持ちになってきてね。後から考えると、それが性の目覚めだったんですねえ…。まあ、男だったらそういう思い出、みんな何かしらあるでしょう」


 そんな子供が、ピンサロ評論や脚フェチ界の大家として名を残し、今やありとあらゆる変態ジャンルを網羅する殿堂入りのエロ事師となった。思春期以降、一体この人の身に何があったというのか?

「いや、経験がどうこうと言うよりも、こればっかりは生まれ持ったものだと思ってますね。世の中には50歳も過ぎないうちにセックスレスなんていう男性も普通にいるでしょう。そうかと思えば、年をとっても絶倫の男だっているわけです。僕の場合、家系からして免疫系というか、そっち方面が強くて、これはもうDNAなんじゃないかと。ウチの親父も90歳過ぎてもドスケベだったしね。
 動物でも、個体差っていうものはあるでしょう。例えば孔雀で言うと、雄は羽をカーッと広げて雌の気を引くんですね。弱い孔雀の雄っていうのは羽がスカスカしていて、雌はそういうのを見るとあいつは弱そうだと思って寄り付かないわけです。動物は人間と違って、子孫を残すために羽を美しく! なんて努力したりしないからね。生まれついての要素っていうのは、孔雀でも人でも一緒だと思うんです。
 逆に言うと、人間だって動物なんだから、個人差はあって当たり前なんですね。自分は性欲が弱い、枯れているといって思い悩む必要はないんじゃないかな」

|性を満喫できていないなら、あえてフェチの世界に飛び込んでみる

 これはまさしく真理。ネット空間には「枯れない男のための精力UP術」などといった耳障りのいいアドバイスがいくらでも転がっているが、そんなものを試したところでそうそう人間、変われるものではない。
 とはいえ、個人差だからしょうがない…と、簡単に諦めきれないのもまた事実。生まれ持った自らの器をしっかりと把握した上で、それを大きくしていく方法はないものだろうか?

 その問いに対し、みよし氏が提案するのは「フェチズムやアブノーマルの扉を開いてみること」。性欲減退に悩む男性に限らず、オープンに性を楽しめていない女性にとっても、アブノーマルやフェチへの目覚めは大きなきっかけになる可能性があるというのだ。

「性の目覚めとは別に、フェチズムへの目覚めというものがあるんです。僕が思うに、フェチ的な志向というものは、人間の遺伝子に組み込まれているんじゃないかと。後天性のものもあるでしょうが、やはり生まれつき備えたものだと思うんですね。
 気づきは、人によってそれぞれです。僕のように早々にフェチを覚えちゃって、しかもひとつだけじゃなくあれもこれもと自分の中に潜んでいたフェチ魂が止まらなくなる人もいれば、50代や60代になって突然覚醒する人もいます。
 要は、その扉をいつ開くか、ということなんです。誰かが気づせてくれる場合もありますが、まずは気になることが少しでもあったら自分で突き詰めてみたらいいわけです」

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 セックスに前向きになれない、もしくは性を謳歌できていない…その理由はもしかすると、あなたがまだ「第2の性の目覚め」を迎えていないだけかもしれない、というわけだ。
 むろん、全ての人がフェティシズムの素質を持っているとは限らない。一体どのように己の内側に秘めた「偏愛志向」を見出せばいいのだろうか?

「あくまで僕の主観ですが、人間の身体を顔・胸・尻…と分けていった場合、脚や足首に執着する人はフェチ傾向が強いんじゃないかと感じます。
 ただここで勘違いをしてはいけないのは、フェチというものは単純ではないということです。脚フェチというと普通はきれいな脚が好きと思いがちでしょう。そうじゃなく、スラッとした脚が好きな人もいれば、踏まれたら骨折しそうなほど太い脚が好きな人だっているんです。自分の嗜好はどこにあるのか、そしてその幅はどこにあるのかを、胸でも股間でもいいですが手を当てて聞いてみるといいですね」

|フェチへの目覚めに年齢は関係ない

 フェチ、アブノーマルの世界は奥が深く、また時として他者の理解を超えるものも多い。

「よく覚えているのは、くしゃみフェチの知り合いですね。女の子がクシュン! とくしゃみをして、その飛沫がかかると、もうそれだけで満たされるって言うんです。
 僕自身も相当いろいろとフェチを抱えていますが、この年になってもまだ新しいものが見つかるもんでね。あるお店に行った時の話なんですが、そこは部屋をピンポンした瞬間からストーリープレイが始まるんですよ。
 お相手は、SMの女王様。で、客の様子を見て、性的思考を探りながらストーリーを組み立てていくわけなんですね。ある日、僕はそこで『有閑マダムに奉仕をする町のなんでも屋さん』という設定を与えられて…。で、その有閑マダムというか女王様が『毎日暇だからとんでもないことばっかり考えちゃう』とか言うわけです。こっちとしてはなんでも屋さんになりきってるから、ハイ何でもお任せくださいと。
 で、どんな流れなのかと思ったら、鼻をチーンと手でかんでジッ…とこちらを見つめてくるんです。お相手に何を求められているか、まあ言わなくても分かりますよね。こっちとしてはもう頭真っ白ですよ(笑)
 でもね、その時から女の人が鼻をかむ姿を見ると、興奮するようになってしまって…。ああいうお姉さんっていうのは、やっぱり見抜く力を持っているんだなってつくづく思いました。自分の中に眠っているフェチ心を引き出してもらうのには、もってこいのお相手かも知れないですね」


 なんとも羨ましい話…と感じるかどうかは意見が分かれそうだが、少なくとも言えることがある。確かに自分の中に性的嗜好が眠っているのなら、その扉を開くことで新たな世界が広がるかもしれない。
 しかし、誰でもみよし氏のように『なんでも屋さん』になりきれるかといえば、実際には難しい。やはり理性というものが邪魔をしてしまうわけだ。

「アブノーマルやフェチの世界だけじゃなくセックスでもそうですが、恥ずかしがっていては新しいものは見つかりません。舞台とかお芝居と一緒で、緊張感はあってもいいけど照れてはダメなんですね。開き直って、劇的状況に身を委ねることです。
 先にお話しした通り、個人差がありますから、みんながみんなそれで上手くいくとは限りません。でも、自分の中に何かあるんじゃないか、そんな探究心が少しでもあるなら、躊躇せずに未知の世界に踏み出せばいいんです。コミュニケーションを進んで取りさえすれば、いくらでも面白い世界が待ってますよ」

|未知の世界への扉を開くことができるか!?

 フェチを談じれば右に出るものがいないラッシャーみよし氏。ここではあえて取り上げなかったが、真面目に性を語りながらも「このあいだ道で◯◯ホテルはどこですかと聞かれたら、うっかり『そのホテトルでしたら』なんて答えてしまって…」「フランス語の勉強で語学学校に行ってるんだけど、フラメンコの話題の時に間違って2回も『フェラ』って言っちゃって…」などと合間合間にエロ話を欠かさない。
 ところが決して単なる下ネタの範疇に留まらない、さまざまな示唆をわれわれに与えてくれるから不思議である。

 生涯現役でありたい、枯れたくないと願う男性であれば、みよし氏の持論から学ぶべきことはきっと多いはずだ。もっとも、「こうはなりたくない」と思う人とて少なからずいるかも知れないが…。

<執筆者プロフィール>
●もがき三太郎
出版業界で雑誌編集者として働いていたが、やがて趣味と実益を兼ねた海外風俗遊びがライフワークとなる。現在は中国を拠点に、アジア諸国と日本を行き来しながら様々なメディアに社会問題からドラッグ事情まで、硬軟織り交ぜたリアルなルポを寄稿している。
-プロフィール-
●ラッシャーみよし・ライター・AV監督。
1956年京都府生まれ。父と兄が学者という家庭で育つ。フェティッシュメーカー「ラッシュ」主宰。早稲田大学大学院在学中からアダルト業界に関わり、80年代にはピンサロ評論の第一人者として活躍。後にカルトジャンルのAV監督として一大ブームを築く。脚フェチなどマニア系ジャンルの専門家としても知られる。



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