ブームに水を差して恐縮ですが…「“偽”タピオカ」と「“毒”タピオカ」について
かわいいし、みんなが飲んでるから私も飲む!
そんな調子で若い女子の間で大流行中のタピオカミルクティーは、今や流行りの店ともなれば数時間並ぶことも当たり前。しかし、彼女たちは恐らく知らない。並んでまで飲もうとしているそのタピオカが、偽物かもしれないということを…。
それに対して、タピオカミルクティー発祥の地である台湾はもちろん、今やこちらが本家と言わんばかりの勢いて街中タピオカ飲料だらけの中国本土の人々は、ちゃんと疑う。
「これ、何か混ざっているんじゃ?」
しっかり疑って、疑りぬいた末、でもやっぱり大勢の若者がタピオカのために並んでしまうのだから結果は同じと言えるのだが、少なくとも中華圏の人々はタピオカが持つ黒歴史をちゃんと認識しているのである。
タピオカと添加物の関係
2013年、タピオカをこよなく愛する台湾人たちを戦慄させる食品スキャンダルが起きた。その名も「台湾毒澱粉事件」。大量摂取すると毒性があるといわれる無水マレイン酸なる物質がタピオカなどに弾力を出すための添加物として使われていたことが発覚し、回収騒ぎになったという事の次第で、安全で衛生的という台湾グルメのイメージを大いに傷つけた。
偽物だったら中国本土とて負けていない。2015年、山東省青島市で「靴のゴム底タピオカ」「古タイヤタピオカ」が発見され、比較的こういう話に慣れている中国人の間でも「金のためにそこまでやるか…」と話題になった。
粒上に加工した古タイヤがミルクティーに入っていたのではなく、本来工業用であるはずの再生ゴム由来の化学物質がタピオカの食感を高めるため、添加物として使われていたということだ。
日本でそんなものが出回っているとは、さすがに思わない。
でも、違法な添加物は使われていなくても、法に触れない添加剤や増粘剤は多くのタピオカに含まれていると思っていい。
そもそもタピオカは100%天然のものと増粘剤を使ったものでは値段にかなりの違いがある上、天然タピオカは日持ちもしない。増粘剤には一般的に食品由来のものが使われるが、パルプに化学物質を加えて抽出する類のものも珍しくないのが実情である(別に毒ではないので念の為)。
もっとも、これは別にタピオカに限ったことではなく、我々が日々口にしている食品の多くには何らかの化学物質が混入されているのだから、ここでタピオカだけを責めるのは酷であるかもしれない。
中国人に流れる言葉「商は詐なり」
では、天然タピオカと偽タピオカを、いかにして見分けるか。
周辺の中国人たちに聞いたところ「有名店ならたぶん大丈夫っしょ」という何ともモヤっとした答えが返ってきた。
中国で並ばないと飲めないほどの人気店といえば、数時間行列は当たり前といわれる「喜茶(HEY TEA)」、そして日本にもたくさんの支店がある「鹿角巷(THE ALLEY)」などがあるが、ここでややこしいのは中国だと「タピオカミルクティー屋にも偽物がある」ということだ。
事実、筆者が現在住んでいる中国の自宅近所でも「鹿角巷」もろパクリの店が堂々と営業している。そんな店で何を出されるかなんぞ、正直分かったものではない。
日本で食されているタピオカの多くは、本場台湾や中国からの輸入品である。小規模店であればまず現地買い付けで品質を見定めた後に商談成立、なんてケースは決して多くないだろう。中華圏の商売人を侮ってはいけない。「台湾製なら大丈夫」なんて考えはもっての外だ。
確かに台湾は親日的であるし、人当たりがよく民度も高い。が、こと金が絡むやいなや台湾人と中国人にさほどの差はないと筆者は感じている。
お人好しの日本人が彼らに何を掴まされるかなど分かったものではない。日本で今起きている爆発的なタピオカブームを見るにつけ「靴のゴム底タピオカついに発見!」などというニュースがいつの日か日本でも流れるのではないかという一抹の不安が拭えない。
タピオカミルクティーの種類
と、ここでこの稿を終えてしまうと、読んでいただいた方にとってタピオカミルクティーを飲む気が失せ、タピオカ投棄問題に拍車をかけるだけとなってしまいそうなので(手遅れかもしれないが)、フォローを込めて中華圏の素晴らしきタピオカミルクティーの文化を紹介したい。
台湾を旅する機会があったら是非お試しいただきたいのは、日本ではあまりお目にかかれない中華圏独特のミルクティーである。おすすめはご当地台湾でも比較的マイナーな「プーアル茶ミルクティー」だ。ハッキリ言って色味はドブ色なのでインスタ映えはしないが、プーアルの土っぽい香りにミルクのまろやかさが加わって、これがタピオカと意外によく合う。
プーアル茶に比べると烏龍茶ベースのミルクティーの方がよく見かけるものの、こちらはよほどいい茶葉を使ったものでないとミルクの味しかしなかったりする。中国茶は香りが命。メニューにちょっとお高いお茶の銘柄を使っているものがあったら、試してみてもいいかもしれない。
この他にも中華圏を旅していると、街のちょっとしたドリンクバーで漢字の羅列を見ているだけでは何だかさっぱり分からない謎のタピオカミルクティーを多々目にするが、あまりの種類の多さに筆者もフォローしきれていない。片っ端から試そうにもタピオカ、すぐお腹いっぱいになっちゃうから。
結局、タピオカに関していうと、中国の一番いいところは、残してその辺に捨ててもまず文句を言われないということなのかもしれない。
「ポイ捨て、ダメ絶対!」という日本だったら当たり前のルールが通用しない中国。そんな国からやってくるタピオカなので、日本の女子の皆さん…少しくらいは「警戒せよ!」
<執筆者プロフィール>
もがき三太郎
出版業界で雑誌編集者として働いていたが、やがて趣味と実益を兼ねた海外風俗遊びがライフワークとなる。現在は中国を拠点に、アジア諸国と日本を行き来しながら様々なメディアに社会問題からドラッグ事情まで、硬軟織り交ぜたリアルなルポを寄稿している。