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夏の風物詩にまつわる珍名さん

雑誌『一個人』編集部です。
今回は、「七夕」「野球」「海」にちなんだ珍名さんを名字研究家の高信幸男さんがご紹介します。
日本テレビ「沸騰ワード」で「はんこが日本一揃う店VS名字研究家」の対決に高信幸男さんが出演されています。前回(2021年6月1日放送)結果は残念ながら負けてしまいましたが、とても見ごたえのあるいい勝負でした。
とても悔しそうな高信さん。次こそ、リベンジ! 私たちも応援してますよ!

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「七夕」「天野川」「星座」これ全部名字です!

7月7日は、七夕。七夕には、日本各地で笹に短冊を提げたシーンが見られます。七夕は、元来中国での行事でしたが、奈良時代に日本に伝わったと言われています。今日では、七夕の夜に、願いを短冊に書いて笹に飾ることが一般的ですが、笹に短冊を飾るようになったのは江戸時代からとも言われています。

ところで、名字にも七夕(たなばた)があります。全国に約80軒の希少な名字で、多くは鹿児島県指宿市に住んでいます。愛知県名古屋市に七夕町の地名があるので、その地名が由来とも考えられますが、田幡や田之端の地名姓を七夕にあやかって「七夕」の文字に変えたことも考えられます。

また、福岡県小郡市には七夕神社があり、同じ九州であることから神社に関係があって生まれた名字とも考えられます。鹿児島県は戦国大名島津氏の本拠地ですが、島津氏は様々な名字を考えて与えたと言われていますで、「七夕」の名字ももしかすると七夕にちなんで与えた可能性もあります。七夕にちなんだ名字では、他にも「天野川(あまのがわ)」という名字も和歌山県に存在しています。長崎県佐世保市には牽牛崎という地名が、群馬県桐生市には織姫町という地名があるので、「牽牛(けんぎゅう)」と「織姫(おりひめ)」の名字も期待しましたが発見できていません。七夕の夜は、夜空を眺めますので、それらに関する名字では、星(ほし)や星座(せいざ)・月星(つきほし)等の名字も存在しています。本名か芸名か分かりませんが、岐阜県の電話帳には流星(ながれぼし)さんもおられます。


「2番、センター番途(ばんと)君」聞いたらたまげる、野球関連の珍名さん

7月は、通常ですと全国高校野球選手権大会の予選が全国各地で開催されます。沖縄県を皮切りに、各地で熱戦が繰り広げられている。各都道府県の代表校が誇りを持って甲子園に出てきます。そこで、今回は野球に関係がありそうな名字をご紹介します。(2021年 夏の甲子園は、8月9日に開幕予定)

そもそも、野球が日本に入ってきたのは明治初期。名字が完全に普及した時代には無かったスポーツなので、野球の名字は存在していません。しかし、発音などが、野球と関係していそうな名字があります。現在は強豪校だと他県からスカウトすることが多々あるので、必ずしも地元の出身者とは限りませんが、昔はほとんどその地域の出身者でした。その中には、その県独自の珍しい名字もありました。

私が一番印象に残っているのは、銚子商業の阿天坊(あてんぼう)選手です。文字では特に感じないが、場内アナウンスで、「バッター阿天坊(あてんぼう)君」と言ったら、どんなボールでもバットに当ててしまいそうな気がします。名前でピッチャーが動揺しそうです。実際に、良い打撃をするバッターだった記憶があります。

思い出に残っている選手名は阿天坊選手ですが、一方で、この名字では、逆に相手に自信を与えてしまうのではないかと思う名字を発見しました。法華津(ほけつ)選手。アナウンスで、「4番、キャッチャー法華津(ほけつ)君」と言ったら、相手は、「補欠(ほけつ)か」とかえって安心してしまうようで面白い。他にも、番途(ばんと)・守(まもり)・走(はしり)等の名字もあり、こちらも、「2番、センター番途(ばんと)君」と聞いたら、バントでもするのかと勘違いしそうです。


【7月の第3月曜日は「海の日」】海部、波留、岬・・・「海」にまつわる珍名さん

7月の第3月曜日は「海の日」の祝日です。平成8年より施行された比較的新しい祝日ですが、今ではすっかり夏の祝日として定着しています。趣旨は「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」とされており島国の日本としては、当初から祝日でなかったことが意外かもしれません。
(2021年の「海の日」は7月22日に移動)

 日本は島国であるため、海に関する名字も多く、「海」を使った名字では、海(うみ)・海士(あま・かいし)・海部(かいふ・あまべ)・海宝(かいほう)・海鉾(かいほこ)・海神(かいじん)・海勢頭(かいせどう)・弘原海(わだつみ)などがあります。また、「波」や「浪」を使った名字では、波入(はにゅう)・波留(はる)・波止(なみとめ・はと)・波々伯部(ほほかべ)・浪切(なみきり)・浪越(なみこし)などがある。海に近接した、港(みなと)・湊(みなと)や浜(はま)・浜辺(はまべ)・浜走(はまばしり)・浜四津(はまよつ)・岬(みさき)なども。

福島県には、船競(ふなくらべ)という名字があります。船で競うことなので、現代では競艇を想像してしまいますが、船競さんの場合は速さではなく船の出来栄えを競ったもので、一番良くできたことから船競を名字にしたらしいです。

「海の日」といえば海水浴ですが、なぜか「泳」を使った名字が見つかりません。現在、海は泳いで遊ぶというイメージですが、昔は海は生活の糧である魚を捕る漁業が主流であったため「泳」は名字には無いのかもしれません。ちなみに漁(りょう・すなどり)という名字は存在しています。

高信 幸男(たかのぶ ゆきお)名字研究家
1956年、茨城県大子町生まれ。高校の時から名字研究を始め、全国を旅しながら名字の由来やエピソード等を取材している。主な著書に『難読希姓辞典』『名字歳時記』『珍名さん』など。日本家系図学会員、茨城民族学会員、日本作家クラブ会員。

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