「嵐」はあるけど「台風」がないのはなぜ?「天気」にまつわる珍名さん他
雑誌『一個人』編集部です。
夏は台風が頻繁に発生する季節です。昔もきっと台風はあったのでしょうが、「台風」という名前はないそうです。一方で「嵐さん」は実在するんです。「嵐」さん、響きがカッコいいですね。ついついあのグループを想像してしまいます。
今回は、「天気」「うなぎ」「山」「幽霊」にちなんだ珍名さんを名字研究家の高信幸男さんがご紹介します!
あなたがまだ出会ったことのない、珍しいお名前が続々と登場しますよ!
「天気」にまつわる珍名
日本では毎年お盆を過ぎた頃から多くの台風が発生する。過去には、室戸台風や伊勢湾台風により大きな被害をもたらしました。
最近は科学の進歩によりいち早く天気を予測することができるようになりました。これにより、災害を未然に予防することができます。天気を予測する試みは奈良時代からありましたが、当時の予測は災害予防というよりも作物の生育に必要な雨などを予測することが重要であったと推測できます。
雨乞いの儀式は全国各地にあり、水卜(みうら)という名字も占いの職業から生まれたものです。ただ、陰陽師のように人の吉凶を占うのではなく、降雨を占ったと考えられます。「水卜」姓は香川県にあり、もともと雨の少ない瀬戸内地方であったことから雨(水)を占っていたと考えられます。「ト」は、元々は「占」という漢字から「口」を省いたものです。
日本には天候に関する名字も多く、晴間(はれま)・曇(くもり)・時雨(しぐれ)・稲妻(いなずま)・雷(かみなり・いかづち)・雪(ゆき)・吹雪(ふぶき)・風(かぜ)・北風(きたかぜ)・嵐(あらし)・大水(おおみず)・洪水(こうずい)などがあります。洪水という名字は、洪水によりほとんどの家が水害にあったにも関わらず、偶然に洪水さんの家だけが水害から逃れることができたことにより、その縁起を担いで名字を「洪水」にしたと伝えられています。
ちなみに、「台風」という名字が存在しないのは、台風という言葉が生まれたのは1956年(昭和31年)で、戸籍に届ける際にはまだ存在しない言葉だったからです。
日本鰻と同じく貴重な名字の「鰻(うなぎ)」さん、その由来とは?
日本では、昔からスタミナ源として鰻が食されてきました。特に、暑い夏の中でも土用の頃は体力が最も消耗することから、栄養源として鰻が食されてきた歴史があります。馴染みのある魚なので誰でも知っていますが、実際に名字となると驚いてしまいます。
元来、名字の由来は、地名や職業が関係していることが多いですが、鰻の名字については地名から生まれたものです。鹿児島県には鰻池という池があります。そこには昔から大きな鰻が住んでいるといわれ、その池周辺の地区の地名も鰻。つまり、鰻さんはもともと鰻漁をしていて鰻になったのではなく、住んでいる地区の地名を取って鰻を名字にしたのです。
現在、鰻さんは全国で数件の貴重な名字ですが、かつてはもっと多くの鰻姓の家がありました。しかし、地名も池の名前も名字も全てが鰻では区別がつかないとのことで、名字を変えた家も少なくありませんでした。日本鰻が絶滅の危機にありますが、名字の中でも数少なくなり貴重なものとなっています。いつまでも鰻の名字を守り続けて欲しいものです。
山梨県には、鰻池という名字があります。その地域には鰻池の地名や池もないことから、もしかすると鰻池さんの名字のルーツも、鰻さんと同じ鹿児島県の鰻池と推測されます。ちなみに、鰻といえば「土用」の「丑の日」を連想させますが、土用(どよう)さんという名字も石川県に存在します。
一緒に富士山に登る“富士山さん”と“登山さん”がいるかも?
8月11日は、「山の日」です。平成26年に制定され、平成28年に祝日法により祝日となった最も新しい祝日です。「山の日」の趣旨は、「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」とあります。今年も、全国各地で多くの人達が夏登山を楽しんでいることでしょう。
ところで、名字の中には山に関するものも多く、山(やま)をはじめ、麓(ふもと)・尾根(おね)・頂(いただき)・峠(とうげ)・峰(みね)・峯(みね)・嶺(みね)等の名字があります。また、山を起点に、山下(やました)や山脇(やまわき)・山添(やまぞい)・山道(やまみち)等もあります。さらに、山そのものの名前を名字にした大雪(おおゆき)・函館(はこだて)・岩木(いわき)・鳥海(ちょうかい)・筑波(つくば)・赤城(あかぎ)・榛名(はるな)・白根(しらね)・天城(あまぎ)・御嶽(みたけ)・比叡(ひえい)・大峰(おおみね)・石鎚(いしづち)・霧島(きりしま)・九重(ここのえ)等、全国を代表する名だたる山の名字があります。中には、岩手山(いわてやま)・月山(つきやま)・富士山(ふじやま)・高尾山(たかおやま)・伊吹山(いぶきやま)・三輪山(みわやま)・吉野山(よしのやま)・高野山(たかのやま)・阿蘇山(あそやま)等の名字も存在しています。
近年は登山ブームで、これらの人達が実際に自分の名前と同名の山を登るとしたならどのように感じるのでしょうか。他にも、登山(とやま)さんという方もいるので、富士山さんと登山さんが一緒に富士山の頂上に立つ姿を見てみたいものです。
「霊」「霊元」「幽谷」難読の珍名さん 7月26日は「幽霊の日」
日本にはさまざまな記念日があるが、そのなかでも一風変わった記念日があります。7月26日は「幽霊の日」とされています。7月26日が「幽霊の日」となった由来は、1825年(文政8年)7月26日に江戸の中村座で「東海道四谷怪談」が初めて演じられた日だからと言われています。四谷怪談と言えば「お岩さん」が登場する日本の幽霊話の中でも代表的なもので、今でも語り継がれています。
昔から幽霊は怖いとのイメージがあるからなのか、「幽霊(ゆうれい)」という名字は存在しません。しかし、「霊」という名字が奈良県に存在する。これは、「みたま」と読む。なぜ、このような名字を付けたのか不思議に思いますが、由来は職業が寺の僧侶であったからで、幽霊とは関係がありません。熊本県には「幽霊寺」と呼ばれる寺があるが、住職の名字は紫安(むらやす)で霊には関係なさそうである。
「霊」の付く名字には「霊山(よしやま・たまやま)」「霊元(よしもと)」「霊田(たまた・たまだ・れいだ)」「霊園(れいえん)」「霊鞍(たまくら)」「霊鷲(たまわし)」などがあります。幽霊は、一般的に人を呪うようなものとして知られていますが、これらの名字はいずれも良い意味での霊を表した名字のように思えます。
一方で、「幽」が付く名字は「幽谷」のみ存在します。こちらは、「かすや」と読む。幽霊の実在は明かではないが、多くの場合「足がなく、ぼんやりとかすんで見える」イメージがある。その様子から「かすや」と呼ぶようになったのかもしれません。
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